帰省をきっかけに恋心が再燃して… 無意識のうちに不倫を始めてしまった52歳男性の恐怖体験
「不倫と同窓会」にまつわる調査はいくつかある。「不倫相手と出会った場所として同窓会と答えた女性が5%だった」というデータや、「女性の3.4%が不倫のきっかけとして同窓会を挙げた」など。はたまた「同窓会で再会した異性と恋愛に発展したことがある人」は男性で10.7%、女性4.5%なんてデータまで。割合として高くはないものの、同窓会は不倫の舞台になるということである(それぞれ「オトカワ」2019年、「マイナビウーマン」16年、「しらべぇ」16年実施アンケートより)。
今回ご紹介するのも、同窓会を機に好きだった女性と親密な関係になった男性ケースだ。だが“思い出は思い出のままにしておけば……”という結末が待っていた。20年以上にわたって男女問題を取材し、『不倫の恋で苦しむ男たち』(新潮文庫)などの著書があるライターの亀山早苗氏が取材した。
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不倫は、精神的な強靱さが要求される恋である。関係を人に言わないことが基本だし、深刻になりすぎると自分の生活が乱される。愚痴ることも不満をためることも御法度だ。家庭を維持したまま関係を続けていくことが重要なのか、今あるものを壊してもいいと思っているのか、選択を迫られることもあるかもしれない。情熱に浮かされる関係を続けながら、常に冷静な判断も強いられるのが不倫なのだ。
伊東晴敬さん(52歳・仮名=以下同)が、かつて思いを寄せていた中学時代の同級生、彩里紗さんと再会したのは5年前だった。
「僕は地方から大学入学のために上京、それ以来、ずっと東京暮らしです。親父は役所勤めで継ぐべき土地も財産もないから、自由に生きろと言われていました。長男ですが、妹が結婚して実家近くに住んでいるので、親のことは妹任せですね」
80代を目前にした両親は今も元気で、夫婦ふたりで暮らしている。それぞれ趣味に没頭し、「自由で楽しそう」だと妹から報告を受けているという。
「30歳で結婚してから、僕はひとりっ子の妻の要望で、妻の実家近くで暮らしています。実家に帰るのもせいぜい年に1度くらいでした」
毎年、お盆時期は仕事の繁忙期でもあり、実家に戻ったことはなかった。ところが5年前、ひょんなことからその時期に休みがとれることになった。共働きの妻、美知子さんは休めない。当時16歳だった長男も14歳だった長女も部活で忙しい。だったら、ひとりで実家に行ってみるかと晴敬さんは思った。
新幹線と在来線を乗り継いで3時間以上かかって帰ると、両親は大歓迎してくれた。妹一家も混じって楽しい時間を過ごした。彼が戻ってきているのを知って、地元にいる中学時代の友人たちが「プチ同窓会」を開いてくれた。そこで彩里紗さんと再会したのだ。
「彩里紗に会えたのは意外でした。中学時代、僕は彼女が好きだったんですが、言い出せないまま卒業してしまった。あの頃は彼女、バレーボールが得意な普通の中学生だったんです。でも高校に入る直前、親が離婚して、それから彼女のよくない噂ばかり聞くようになった。地元でも有名な不良グループとつるんでいるとか、16歳で妊娠したとか。そのうちふらっと地元から消えてしまったんです」
彼が地元と縁が薄くなっていたせいもあり、その後は彼女の噂も途絶え、彼自身も忘れかけていた。だからプチ同窓会で彩里紗さんに会ったときは驚いたのだ。
「いくつになっても、かつての面影というのはあるものなんですね。彼女はすっかり変わっていたけど、それでもかすかに中学生の彩里紗が透けて見えるところはあった。『ハルちゃん? わあ、オッサンになったね』というのが彩里紗の第一声。苦笑するしかなかった。彩里紗はニコニコしていて楽しそうだった」
一次会が終わる頃、彼女はすっと寄ってきて「タカちゃん、ふたりで話さない?」と言った。僕もそう思ってたよと彼は言った。
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