岸田首相は内閣改造・党役員人事で「鎌倉殿」人事を参考に?「萩生田政調会長」「高市経済安保相」起用の本当の狙い
「位打ち」
さて、残る9人は初入閣なのだが、ここに岸田首相の「検討使」ぶりがよく現れた。というのもこの9人、政局にある程度の知識がある人でもあまり名前を知らないし、表だった実績もない。岸田派2人、安倍派2人、二階派2人、茂木派2人、麻生派1人。見事なまでに各派閥からの意見を聞き、検討し、そして配置していることが分かる。
彼らは「骨格」とも「筋肉」とも言えない。となると「脂肪」という言葉が頭をよぎる。体脂肪は人体にとって必須の組織だが、身体の動きを鈍くすることもある。
そんな中、今後の動きが注目される人物は、党役員では安倍派の萩生田光一政調会長、内閣では無派閥の高市早苗経済安全保障大臣だろう。
萩生田氏は東京の八王子市議会議員から都議会議員、衆議院議員、そして自民党三役まで出世してきた、今や党内では絶滅危惧種とも言える生粋の党人派だ。
今回の政調会長抜擢については、萩生田氏が経産大臣時代、ロシアとの天然ガス事業で難しい交渉をこなしてきたことなど、その業績を岸田首相が評価したからだと言われている。
一方で、萩生田氏が岸田首相に重用されていることに対し、トップを失って集団指導体制となった安倍派(清和会)内では不協和音が生まれている。もともと萩生田氏は「気も遣えるし、その反面で押しも強く、なかなかの政治家」(自民党中堅議員)と、党内での評価も高い。派閥内で萩生田氏が一歩抜きん出た状態は、一部の清和会幹部にとっては目の上のたんこぶなのだ。
また、政策的にも大きな違いがある清和会と岸田首相との橋渡しに、萩生田氏は相当苦労することになる。このため、密かに「位打ち」を望み、今は態度を表に出さない清和会幹部もいる。
「位打ち」とは、トントン拍子に身分不相応な出世をさせて、相手を重圧の中で自滅させる陰謀のことだ。後鳥羽上皇が鎌倉幕府3代将軍の源実朝に位打ちをした例がある。また、後白河法皇が源義経に官位を授けて、その結果、義経が滅んだことからも、権力闘争を本質とする政治の世界では、高位高官に就くことは危険と隣り合わせだというのは歴史が教えている。萩生田氏は一歩間違えれば、義経よろしく出身派閥から恨まれる事態に陥るだろう。
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