カチコミに「高速バス」、餞別は5万円、内縁の妻は涙の嘆願……山口組抗争の陰で「哀しきヒットマン」法廷レポート

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 2015年8月に日本最大の指定暴力団・山口組が分裂してからはや7年。今年6月5日には、六代目山口組との抗争状態が続く神戸山口組の井上邦雄組長宅が銃撃され、また、翌6日には絆會の織田絆誠会長宅に軽乗用車が突っ込むなど、神戸は一時騒然とした。今後も抗争は激化するのか、はたまた収束へ向かうのか――。予断を許さない状況が続く。そうしたなか、神戸地裁で先日、六代目山口組の四次団体の組長と若頭に実刑判決が言い渡された。その法廷からは、あまりに哀しい令和ヤクザの生き様が見えてきた。

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 被告となったのは、四国に本部を置く六代目山口組の四次団体の組長(52)と若頭(41)。今年1~2月にかけて神戸市内の飲食店を3回にわたって襲撃した事件を巡って逮捕され、建造物損壊と威力業務妨害の罪で起訴されていた。組長が指示し、若頭が実行役だったとみられている。2人の具体的な罪状は以下の通りだ。

 1月31日の晩、若頭は営業が始まったばかりの飲食店のガラス扉に自転車を投げつけて破壊。続いて2月17日夜に、今度は営業中の店に入って消火器を噴射し、さらに翌18日の夕方には、入口のガラス扉をバールで叩いて破壊している。店側が受けた被害は大きく、最後の襲撃から2ヵ月ほど休業を余儀なくされた。そして、兵庫県警に逮捕されている。

 6月28日午後、神戸地裁で最も大きな101号法廷。開廷前には職員に誘導されて荷物検査とボディチェックが行われ、傍聴席との境にある木製の柵はアクリル板の仕切りで隙間なく埋め尽くされていた。法廷の前方にはパイプ椅子に座った警備員が2人配置され、傍聴席をくまなく見渡し目を光らせるという、ものものしい雰囲気で裁判は始まった。

「一旗揚げて忠誠心を見せよう」と決意

 それにしてもなぜ、この飲食店が標的になったのだろうか。

「被害に遭った飲食店は、神戸山口組・井上邦雄組長の関係先という噂が流れていたそうです。ただ、本当に神戸山口組と関係があるかは怪しく、被告人らが早合点した可能性も指摘されています」(全国紙社会部記者)

 噂の真偽は定かではないが、その動機は身勝手極まりないものだった。

 法廷で検事は「2人の間で、“しばらく抗争が起きていない”という話になり、組長自身も“一旗揚げて(上部組織に)忠誠心を見せよう”と決意した」と事件の背景を説明している。

 普段は四国にいる若頭はどうやって神戸まで向かったのだろうか。黒塗りの高級車で意気揚々と神戸へ……と思いきや、移動の手段は「公共交通」だった。2回目の襲撃時は大雪に見舞われ、組長が若頭を途中までマイカーで徳島まで送り届け、そこから高速バスに乗り換えて向かったという。

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