クラフトコーラはなぜ瓶詰が多い? 知られざる「クラフト事情」をマニアが解説
なぜシロップ瓶での販売が多いのか
クラフトコーラをお店や通販などで購入された方ならご存じかと思いますが、現在クラフトコーラは「シロップ瓶」での販売がとても多いです。これはカルピスの原液のようなもので、飲む際には炭酸水で大体3~4倍に希釈する必要があります。しかし皆さんが清涼飲料水としてイメージするものは缶やペットボトルなど、蓋を開けてすぐ飲めるRTD(ready to drink)タイプのものではないでしょうか。「シロップ瓶の方が見た目に高級感が出る」「シロップだと炭酸水で割る以外で色々アレンジできる」などの意見もありますが、製造事情の観点からは切実な理由があるのです。
クラフトコーラの多くが委託製造されていることは先ほど説明しましたが、委託製造には「最小ロット」が存在します。シロップ瓶の場合は大体数百本から受け付けている製造所もありますので、原料費等も含めて数十万円程の資金があれば作ることができ、個人レベルでも製造が可能です。しかしこれがRTDタイプの瓶となると、最小ロットは1000~2000本となります。原料費はシロップ瓶と大差ありませんが、商品のサイズが大きくなり、小規模なメーカーだと保管場所の問題が生じます。
また、クラフトコーラは食物を煮出して作るため、完成したシロップは細かなスパイス片や果肉等が多く含まれています。これがクラフトコーラの「クラフト感」を演出する一助となっているわけですが、このシロップを瓶に詰めるだけであれば、“みたらし”のような粘体のものを充填する専用機械を用いれば問題ありません。しかし、炭酸水と混ぜてRTDの瓶に充填する場合はそうはいきません。なぜならRTD飲料の充填機は固体の不純物が入ることを想定して作られていないからです。甘味料、香料、酸味料、着色料等の添加物でほぼ構成される現代の清涼飲料水に、固体の不純物が入る余地は殆どありません。そのためクラフトコーラをRTD飲料にする際は充填が可能になるレベルまで漉したり、場合によってはレシピを変更したりする必要があるのです。
ちなみにペットボトル飲料にする場合の最小ロットは10万本程度からで、費用は五百万円から。缶の場合は30万本程度からで費用は数千万円からと、格段にハードルが上がります。現在クラフトコーラと名前のついたペットボトル飲料が成城石井から、缶飲料はアサヒ飲料から販売されていますが、やはり皆さんご存じの大きな会社ですよね。
以上のような理由から、シロップ瓶で販売されるクラフトコーラが多いのです。逆に言ってしまえば、大きな飲料メーカーが完全にハンドメイドで拘った少数製造のシロップ瓶は出すことはできません。そういう意味では、各クラフトコーラメーカーが自身の規模に応じて最適なクラフトコーラを製造し、うまく棲み分けができているという考え方もできます。
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