ソフトバンク機密漏洩事件でわかったロシア通商代表部の闇 元公安警察官の証言
“点検”と“消毒”
警視庁公安部は、カリニンがSVRのスパイであることを最初から把握していた。
「捜査員はカリニンをマークしていました。彼は、来日直後から外出が多かったので、6人の捜査チームが監視を行ったのです。するとカリニンは、自分が尾行されていないか何度も振り返って確認する“点検”を行い、乗った電車のドアが閉まる直前にホームに降りて尾行をまく”消毒”をしていました。これは重要な人物と接触しているなと思いましたね」
2019年から捜査チームをもう1班増やし、カリニンを監視するようになった。
「捜査員がカリニンを尾行したところ、銀座のコリドー街にある居酒屋でAと会食しているところを確認しました。Aは、カリニンに電話基地局の通信設備関連工事の作業手順書などを渡していたといいます。ロシアは、5G(第5世代移動通信システム)に必要な多数の基地局を建設するために技術が必要だったのでしょう」
Aはカリニンから謝礼を受け取っていたという。
「最初は、HPに載っているような公の情報の見返りに3000円のクオカード。次に社内報をもらって5000円の図書券……という具合に徐々にハードルを上げていき、機密情報には1回で20万円渡していたそうです。結局、A氏はカリニンに2回機密情報を渡して計40万円受け取りました」
2020年7月9日、東京地裁はA氏に対し懲役2年執行猶予4年、罰金80万円の有罪判決を下した。
警視庁は外務省を通じ、Aと接触したロシア通商代表部の職員やカリニンの出頭を要請。カリニンは2020年2月、逃げるように帰国した。
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