「アレフから娘を取り戻したかった」と元妻を惨殺した男 子どもたちが法廷で明かした“父親の真実”とは
家族を“鎖”で繋いで奪還
このように、彼は自分の行いについて問われると、質問そのものに真正面から回答せず、ずれた話をすることがたびたびあった。そして時折、答えに窮した。
この被告人質問の直前に行われていたのは、西村とAさんの長女、次女、そして、入信していない長男に対する証人尋問だった。彼らは西村がAさん、さらには子どもたちに対して暴力を振るっていたと証言している。
次女「母は、1回目に家を出る前まで、父から毎日暴力を振るわれていました。私も父から暴力を振るわれていました」
長女「うちの家庭は母が全部受け止めていた。父に殴られても口答えをしたことがない。もともと出家するために家を出たわけじゃないんで」
長男「しつけは厳しいものでした。手を挙げることもありました。男のきょうだいだけでなく、女のきょうだいにも……尻を手で叩く、ゲンコツで殴るなど……。納得できない理由で殴られたことはあります。オウムをやめさせようとする父が母に振るう暴力、それが姉達には頭に焼き付いているのだと思います」
また、長男と同じく入信していない次男が家を離れたのも、西村の暴力が原因のひとつだったという。加えて、西村が家族を奪還する際、彼らを“鎖”で繋いで北海道から福岡まで車で移動したといい、「これが一番怖かった」と次女は明かした。
「洗脳されとるからです」
検察官はこうした子どもたちの証言を西村に問いただす。
検察官「Aさんが子どもを連れて施設に入った際、あなたが抗議して子どもを取り戻してますが、その後まず長女、次に次女があなたのもとを離れて母のところへ行きましたね。これは何故だと思いますか?長女も次女もあなたの暴力が原因だと言っていましたが」
西村「それは違います。それはもう、洗脳されとるからです」
検察官「ところが、次男もあなたの元を離れたのは『暴力が怖かったから』だと言っています。彼は宗教はやっていませんよね」
西村「次男は優しい男で……しょっちゅう、警察沙汰になって私から怒られてました……万引きはするわ……で、謝りに行きました……」
検察官「つまり次男が家を出たのはあなたの暴力が原因ではないと?」
西村「……いや、それもあると思いますが、そればかりじゃない……」
検察官「長女も次女も長男も、あなたの暴力が怖かったと証言しているんです。それを受け止める気はないんですか?」
西村「それは思いますが、私は加減を心得てて、しつけの範囲と……」
[3/4ページ]