今どきのヤクザは続けても辞めても大変…現役組長と元暴力団員に襲い掛かったトラブル

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組員には“補償”もゼロ

 逮捕されたAさんは留置場に拘束され、数日間にわたって取り調べを受けた。そもそも密輸事件とは無関係なので、話すことは何もない。すると捜査員たちは、Aさんが隠しごとをしている、否認をしているとして、執拗に疑い続けた。

 繰り返すが、もしAさんが暴力団員ではなく一般人だったら、絶対にこんな目には遭ってはいなかっただろう。

 Aさんは、暴力団員で居続けることにホトホト疲れたそうである。密輸事件の取り調べが進むにつれて、BやCだけでなく他の共犯者たちの証言からもAさんは無関係だと判明し、ようやくAさんは不起訴で無罪放免となった。

 誤認逮捕の場合、被疑者補償規程によって、身柄拘束を受けた1日あたり1000円以上1万2500円以下が補償される。

 Aさんが密輸事件と無関係だったことは明白な事実だ。にもかかわらず、暴力団員であるという理由だけで、補償対象から外された。補償を受けることはできなかったのだ。

本末転倒

 Aさんは、もう暴力団を辞めてしまおうと考えたこともあったそうだが、脱退したところで今さらやることも見つからない。仕方なく「暴力団員=弾圧の標的」という生き地獄のような生活に耐え忍ぶ日々を送っている。

 暴力団の取り締まりに関する法律や規制が強化される度に、「とにかく暴力団員を逮捕するべき」という気運が社会的に高まってしまうのはしょうがないことなのかもしれない。

 そうした気運に後押しされ、警察も暴力団の取り締まりに前のめりとなる傾向があるのかもしれない。

 しかし、そのせいで見込み捜査が横行するような事態となれば、まさに本末転倒ではないだろうか。

意外な落とし穴

 刑務所暮らしを終えたKさんは、暴力団員生活に息苦しさを覚え、足を洗った。

 晴れてカタギとなったKさんは、暴力団員時代から親交があった外国人実業家のGと組んで、日本の中古車や重機等を海外に輸出販売する会社を本格的にスタートさせた。

「エンジンがあるものなら何でも売買するよ!」

 Kさんは元気溌剌、毎日のようにあちこちを駆け回り、熱心に仕事に励んだ。そして会社も軌道に乗った。Kさんは足を洗った暴力団員としては、かなり成功した部類だった。

 Kさんは暴力団から離脱したとはいえ、人間的なつき合いは多少残っていた。昔の知り合い(現役の暴力団員)や自分の元若衆(子分)たちからの生活苦にまつわる相談に乗ることもしばしばだった。ある元若衆がカタギになることを支援したこともあった。

 Kさんは日本国内で集めた中古車や重機などを、外国人実業家のGに売り渡すことで輸出業を成立させていた。Kさんの売り先は全てG経由。もしGが裏切ったり、音信不通にでもなったら、Kさんのビジネスは瞬く間に頓挫してしまうという危険性があった。

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