「天才美少女役」ばかりの平手友梨奈の強さと弱さ 橋本環奈との“意外な共通点”とは?
前田敦子との比較に見る自意識との向き合い方 「天才美少女」役ばかりの強さと弱さ
天才ではないヒロイン役では、昨年のNHKドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」がある。言い返したり相手をバカにする演技や間の取り方はすごく自然なのだが、泣いたり取り繕ったりするシーンはやりにくそうに見えた。葛藤や恥ずかしい部分を、演技でも見せるのが苦手なのかもしれない。(ちなみにこのドラマは剛力彩芽ちゃんがとても良い)
演技と自意識という点では、同じく絶対的センターから女優に転じた前田敦子さんとは対照的だと感じる。彼女が卒業後に出たのはオリジナル作品が多く、アイドル時代のイメージを逆手にとった役選びをする平手さんとは対照的に、ひとつのイメージに縛られることを拒むかのようだった。「幽かな彼女」「クロユリ団地」「もらとりあむタマ子」「毒島ゆり子のせきらら日記」・・・役柄もバラバラ、ラブシーンもさらっとこなしている。
当時見ていた時、前田さんの大きな瞳や裏返るような声、「芝居、やってます!」という気負いは浮いて見えたこともある。でも、もともと女優志望と公言していただけに、すごく演技が好きなんだな、という情熱も感じたものだ。
ひるがえって平手さんがマンガの実写化作品に強いのは、未知の役を自分なりに表現することより、見た目も含めて既にイメージができているキャラクターに自分を合わせる方が楽なのかもしれない。自意識など出すまいと、でもにじみ出る意地や葛藤が、気迫になるのだろう。
いうなれば、0から1を作ることが好きな前田さんと、1を100にするのが得意な平手さん。どちらにも良さがあるし、どちらにも批判はある。どんな作品にも染まれるのか、ガチガチの設定がないと入り込めないのか。平手さんは天才美少女役という鎧をまとうことで、人間が持つずるさや恥の意識、誰しもが持つそういうカッコ悪い部分から目を背けているような過ぎた清廉さを感じることもある。そして冷静な平手さんのこと、いつまでも天才美少女役ではいられないことを、よくわかっているのはたぶん彼女自身ではないだろうか。
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