老人ホーム選びで「口コミ」が役に立たない理由 「24時間看護師常駐」は意味がない?
ホーム側の思う壺
その上で、まず何よりも、入居者である親の快適さ、QOLの向上を考えると、転ホームは大切な選択肢のひとつなのです。
そして、親を入居させる子どもにとっても転ホーム実践は重要だと考えます。転ホームなど、あれこれ考えたり、引っ越し費用も掛かって負担が増すばかりではないかという声が聞こえてきそうです。その通りでしょう。
しかし、そう考えることこそが老人ホーム側の思う壺なのです。入居時は一刻を争う状況だったので、とにかく預かってくれるところに親を入居させた。しかし、しばらく経ってみると、どうも親に合っている老人ホームとは思えない。そう感じてサービス内容の見直しについて掛け合っても、おそらく老人ホーム側は意に介さず、さして相手にしないでしょう。ホームはこんな“キラーフレーズ”を用意しているからです。
「だったら、出ていってもらっても構いませんよ」
そう言われてしまうと、自宅で面倒を見られず追い込まれて親を入居させた子どもは何も言い返せません。
老人ホームに緊張感を与える
でも、これはおかしい。親を預ける子どもや家族の側も“切り札”を持っておくべきなのです。
「分かりました。では、転ホームします」
老人ホーム側はこの言葉をとても嫌がる。つまりホームの本音としては、入居者とその家族に、老人ホーム業界の実態を知ってもらっては困るのです。
したがって、この切り札を持っていることが、「釣った魚にエサはやらない」とばかりに、質の向上を怠る老人ホームに緊張感を与える。それが入居する老親、ひいてはいずれ老親となって入居する子ども世代にとっても、老人ホームの環境改善という果実をもたらしてくれるはずです。
前編を読む(「老人ホームは現代の姥捨て山」 利用者が気を付けるべき施設の「キラーワード」は? プロが明かす)
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