老人ホーム選びで「口コミ」が役に立たない理由 「24時間看護師常駐」は意味がない?

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ホーム側の思う壺

 その上で、まず何よりも、入居者である親の快適さ、QOLの向上を考えると、転ホームは大切な選択肢のひとつなのです。

 そして、親を入居させる子どもにとっても転ホーム実践は重要だと考えます。転ホームなど、あれこれ考えたり、引っ越し費用も掛かって負担が増すばかりではないかという声が聞こえてきそうです。その通りでしょう。

 しかし、そう考えることこそが老人ホーム側の思う壺なのです。入居時は一刻を争う状況だったので、とにかく預かってくれるところに親を入居させた。しかし、しばらく経ってみると、どうも親に合っている老人ホームとは思えない。そう感じてサービス内容の見直しについて掛け合っても、おそらく老人ホーム側は意に介さず、さして相手にしないでしょう。ホームはこんな“キラーフレーズ”を用意しているからです。

「だったら、出ていってもらっても構いませんよ」

 そう言われてしまうと、自宅で面倒を見られず追い込まれて親を入居させた子どもは何も言い返せません。

老人ホームに緊張感を与える

 でも、これはおかしい。親を預ける子どもや家族の側も“切り札”を持っておくべきなのです。

「分かりました。では、転ホームします」

 老人ホーム側はこの言葉をとても嫌がる。つまりホームの本音としては、入居者とその家族に、老人ホーム業界の実態を知ってもらっては困るのです。

 したがって、この切り札を持っていることが、「釣った魚にエサはやらない」とばかりに、質の向上を怠る老人ホームに緊張感を与える。それが入居する老親、ひいてはいずれ老親となって入居する子ども世代にとっても、老人ホームの環境改善という果実をもたらしてくれるはずです。

前編を読む(「老人ホームは現代の姥捨て山」 利用者が気を付けるべき施設の「キラーワード」は? プロが明かす

小嶋勝利(こじまかつとし)
老人ホームコンサルタント。1965年生まれ。不動産開発会社勤務を経て、介護付き有料老人ホームで介護職、施設開発企画業務、施設長を経験。2006年に有料老人ホームコンサルティング会社を設立。現在、公益社団法人「全国有料老人ホーム協会」の業務アドバイザーを務める。『間違いだらけの老人ホーム選び』等、著書多数。

週刊新潮 2022年8月4日号掲載

特別読物「そこは本当に『終の棲家』か 『老人ホーム』の常識を覆す『転ホーム』のススメと『施設の選び方』」より

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