日本人の「不安遺伝子」は世界一 『スマホ脳』著者が明かす、うつを防ぐ最も効果的な方法

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うつには“自分を守る”役割がある

――体は免疫系を起動させるとして、脳はどんな反応をするのだろう。

「“危険にさらされているぞ!”と判断した脳は、気分を下げるという調整を行います。テンションを下げ、落ち込ませ、精神状態を悪化させて私たちを引きこもらせ、危険から遠ざけようとする。これがうつと呼ばれる状態です。

 うつの原因は多岐にわたりますので、これがすべてではありません。関連する遺伝子は44にも及ぶのですから。ただ、炎症に起因するうつは3分の1に達すると考えられているのです。

 私が診た多くのうつ患者は、なぜ自分がうつになってしまったのだろうと悩んでいました。自分の心が弱いからだろうか。性格が問題なのだろうか。遺伝なのだろうか。でも、現代のライフスタイルが実質的な原因となるうつもあるということです。

 また、さらに重要なのは、うつにはこうした“自分を守る”役割があるのを理解することです。

 不安障害も同じです。パニック発作や恐怖症、PTSDにもそれぞれ意味があるのです。いわば隠れた自然の防御メカニズムであり、私たちの脳が正常に機能している証でもあります。

 脳が自分を守るために、感情を鈍麻させたり、身体活動を鈍らせたり、脳内の警報器を過剰に鳴らしてみたりする。その仕組みを知ることが患者の救いになる場面を、私は何度も見てきました。

 現在、うつや不安に苦しんでいる人は、当然ですがまず医師の診察を受けてください。精神科で薬を処方されている人はかかりつけ医の指示に従ってください」

最も効果的なのは運動

――それでも人はストレスから無縁ではいられまい。とりわけ日本人は「世界で最も不安遺伝子を持つ」ともいわれるのだからなおさらだ。私たちは、不安やうつとどう付き合っていけばいいのだろうか。

「確かに遺伝子の影響もあるのでしょうが、不安やうつは複雑です。うつに関連する遺伝子は44もあると言いました。そうした遺伝子の要素に加えて、脳内のさまざまな部位やシステムが作用して不安やうつという結果をもたらします。

 ところが、驚くほど共通する要因があります。ストレスです。長期間続く、自分では制御できないと感じるストレス。“遺伝子が弾を込め、環境が引き金を引く”という言い方ができるかもしれません。

 脳には可塑性があります。暮らし方の変化で脳の働きも変わります。睡眠を充分取ること、長時間座り続けるのをやめること、友人と会うこと、SNSやデジタル機器に接する時間を減らすことなどがストレスの低減に有効ですが、最も効果的といえるのは運動でしょう。実際、運動でうつのリスクを下げられるという研究結果も発表されています。

 イギリスで15万人を対象に行われた実験では、体のコンディションの良い人はうつになるリスクが半分ほどに減り、不安に襲われるリスクも低かったという結果が出ています」

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