日本人の「不安遺伝子」は世界一 『スマホ脳』著者が明かす、うつを防ぐ最も効果的な方法
うつも炎症を起因とする病気
さて、2000年代初頭の教科書では、このサイトカインは脳には伝わらないとされていました。ところがそうでないことがわかったのです。これは医学史上、非常に重要な発見でした。その後、いくつもの研究の末、脳と免疫系は無関係などころか、密接な連係を持つことがわかってきました。
2010年代、デンマークの研究者たちが7万3千人を対象に調査を行っています。分析の結果、軽度のうつ症状、疲労感、自尊心の低下などが見られた人たちは、炎症の指標となるCRPというタンパク質の数値が高い傾向にあると判明しました。これも大きな発見です。
CRPは通例、結核などの慢性感染症、心筋梗塞やリウマチ、肝硬変、悪性腫瘍などで高い数値を示します。これがうつでも認められたということは、うつもまた炎症を起因とする病気だという例証の一つです。
つまり、免疫系の活動が私たちの精神状態にも影響を及ぼし、その作用が活発化するとうつの要因になるようだということです。
ストレスによる慢性的な炎症
続けてご説明しましょう。
人類の歴史上、炎症というのはもっぱら細菌やウイルスによる感染、あるいはけがで起きていました。
原因はいわば一過性のものだったのですが、現代の炎症要因は違います。長期間その状態が続く傾向にあり、慢性的に“炎症がある”と脳や体に伝え続けます。肥満、ジャンクフードの摂取、喫煙、環境汚染物質の吸収などが要因として挙げられますが、中でも最大の要因の一つがストレスなのです。
脳や体が、この炎症はこうした現代のライフスタイルによるものだ、いや、感染によるものだ、と区別できれば、無駄に免疫系を稼働させることもないでしょう。しかし、そんな区別はつけられない。“炎症は炎症”と捉えて、細菌やウイルスに攻撃されているときと同じ反応をしてしまうのです」
[4/6ページ]