日本人の「不安遺伝子」は世界一 『スマホ脳』著者が明かす、うつを防ぐ最も効果的な方法

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3人に1人以上が孤独という現代

 実際、ストレスを感じると免疫系が活性化します。免疫系は非常にエネルギーを消費しますから、常に作動してはいられない。そこでストレスがスイッチの役目を果たすのですね。

 孤独もまたストレスになりえます。人間は集団で暮らしていましたから、その集団からはぐれることや追放されることは死の危険が増すことを意味します。

 孤独が及ぼす医学的なリスクについての発見は、この10年で最も驚くべきものと言っていいでしょう。詳しくは『ストレス脳』で一章を割いて解説していますからそちらを読んでほしいのですが、実は3人に1人以上が孤独に陥り、12人に1人は医学的に非常に深刻な状態にさらされているという研究結果があります。

 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちが12年間にわたって4200人を対象に行った大規模な調査があります。そこでは50歳以上のうつの人のうち、20%が孤独が原因でうつになっていたことが判明しています。

 また、心疾患を経験した1300人に対する調査では、孤独には大量の喫煙や飲酒と同程度のリスクがあり、寿命を縮める要因になったと報告されていますし、3千人近い乳がんの女性に対する追跡調査でも同様の結果が出ています。

 計30万人を対象にした148件の研究をまとめると、孤独は脳卒中や心筋梗塞で死ぬリスクと同等だといえます。孤独という状況は、1日にタバコを15本吸うに等しいのです」

慢性的に“炎症がある”

――ストレスは「深刻な病気を引き起こす現代最大の炎症要因の一つ」という話が先にあったが、これはどういうことなのか。

「炎症というのは物理的刺激であったり、けが、あるいは毒や細菌、ウイルスの体内への侵入などで起こる人間の体の反応です。腕を掻いて皮膚が赤くなるのも炎症ですね。

 この炎症が特定の場所で長く続くと、深刻な病気の原因になることがあります。ざっと例を挙げれば、心筋梗塞や脳卒中、リウマチ、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症などもそうです。

 実は以前、脳と免疫系というのは無関係だと考えられていました。

 傷口から菌が入るとサイトカインと呼ばれる物質が産生され、免疫系が感染源を攻撃します。サイトカインは他の細胞に“体内で感染が起きているぞ”と知らせることもします。

 コロナ禍では感染後の重症化の例として「サイトカイン・ストーム」という現象が注目されました。免疫系が暴走状態になり、致命的な状態を引き起こすわけですが、そのきっかけは多量のサイトカインが産生されるプロセスが起動してしまうことです。サイトカインは本来、体を守るために分泌されるのですが、一方でそういう側面をも持つ物質なのです。

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