日本人の「不安遺伝子」は世界一 『スマホ脳』著者が明かす、うつを防ぐ最も効果的な方法

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なぜパンデミックで精神疾患に?

 ハンセン氏は言う。

「冒頭で触れましたように、原因はさまざまだと思います。自分や家族、親しい友人がコロナウイルスに感染するかもしれないという恐怖、持病があるのに病院にかかれない不安、親しい人たちに会えない孤独、それぞれがストレスになりますね。そうしたストレスから精神疾患を発症するというのは充分にありうることです。

 都市まるごとのロックダウンや外出の制限も世界のあちこちで実施されました。自宅にいて長時間座っていることも、実は体にとってストレスです。パンデミックでそうした“座っている時間”が増えた人もいるでしょう。あるいは『スマホ脳』で指摘したように、デジタル機器にアクセスする時間が増えたからかもしれません。ついSNSにハマってしまうとかね」

どんな先祖が過酷な時代を生き延びられた?

「これは多数の研究から判明しているのですが、1日に4~5時間をSNSに費やす若者は、自分に不満を抱え、気分の落ち込みを感じる割合が高いんです。4~5時間というのは10代では平均以下の長さですが、特に10代の女子では影響が顕著です。ある調査によると15歳女子の62%が不安・心配、腹痛、睡眠障害といった慢性的なストレス症状を訴えています。

 あるいはそうしたさまざまなことが原因で睡眠不足になったり、運動不足になったり、あるいは太ってしまったりしたことも一因かもしれません。現代的なライフスタイルは、うつなどの精神疾患や精神的不調に関係してくるのです。

 もちろん、遺伝的な要因もあります。しかし、うつは肺炎や糖尿病といった病気と何ら変わりません。うつや不安障害は人生で4人に1人が経験します。そのことをまず知ってほしいですね」

――パンデミックへの恐怖や不安がストレスになるのはわかるとして、孤独もストレスの要因なのか。

「ストレスとは何かといえば、深刻な病気を引き起こす現代最大の炎症要因の一つでもある。この点は後述しますが、ストレスは同時に、体の防御メカニズムの一部ともいえます。そこからまずお話ししましょう。

 この数十年の人間の行動様式の変化は、人類史上類を見ないスピードで進みました。でも、人間の脳はサバンナで暮らしていた頃とさほど変化していません。

 その時代の人間の主な死因は飢餓や感染症、怪我や人間同士の争いでした。成人する前に約半数が死んでいました。人間の脳はそのような環境で進化し、生き延びた者だけが子孫を残せました。

 どんな先祖が生き延びられたか? 危険に対して適切にストレスを感じられた人たちです。ストレスを感じられなかった人たちは危険を察知できず、死んでしまい、子孫を残せなかったでしょう。ストレスにはそういう役割もあるのです。

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