プロ注目の京都国際・森下瑠大が初戦で消える…スカウト陣は「これで下位でも指名できると喜ぶ球団もある」

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貴重なサウスポー

 絶対的な目玉が不在と言われている今年の高校生ドラフト候補。そんな中でも下級生時代からの実績という側面で、1、2を争う存在と言えるのが京都国際のエース、森下瑠大だ。【西尾典文/野球ライター】

 昨年は春夏連続で甲子園に出場すると、夏は2試合連続で二桁奪三振をマークするなど、チームの準決勝進出に大きく貢献。さらに、新チームとなった秋の近畿大会でも、履正社を相手に11奪三振完封勝利と圧巻の投球を見せた。貴重なサウスポーということもあって、この時点から「2022年のドラフト上位候補となるのでは」という声が多かった。

 ところが、最終学年となった森下には、大きな試練が立ちはだかる。出場を決めていた選抜高校野球は、大会開幕直前に部員の新型コロナウィルス感染により出場辞退。今年初の公式戦となった春の京都府大会では、初戦でリリーフとして登板し3回1/3を投げて自責点0、5奪三振とさすがの投球を見せたが、その後は肘を痛めて実戦から長く遠ざかることとなった。

 ようやく、この夏の京都大会で復帰し、決勝の龍谷大平安戦では6回を投げて1失点と好投したものの、まだまだ本調子には程遠いという声が多かった。それだけに、夏の甲子園でどこまで復調しているかというのが大きな焦点となっており、「大会1日目の見どころはその一点だけ」と言い切るスカウトもいたほどである。

スカウトの“意外な言葉”

 しかし、結果は一関学院(岩手)を相手に3回を投げて4失点で降板。ストレートの最速は140キロにとどまり、変化球も高く浮くボールが目立つなど、不安を払拭することはできなかった。

 チームも最終回に2点差を追いつく粘りを見せたものの、延長11回のすえにサヨナラ負け。昨年の活躍を考えると、寂しい“最後の夏”となった。この春から一度も満足のいくピッチングを見せられなかったことを考えると、10月のドラフト会議で厳しい評価となることが予想される。

 しかし、プロのスカウトからは“意外な言葉”が聞かれた。

「5月以降、全く実戦で投げられていなかったことを考えると、よくここまで戻ってきたなというのが第一印象ですね。スピードで勝負するタイプではないので、今の状態で140キロ出たというのは“御の字”だと思います。高校生の左ピッチャーとしては完成度が高いですし、バッターを見ながら投げられる投球術とかはなかなか教えてできるものではありません。そういう面は去年から散々見せてくれているので、あとはしっかり体を鍛えていけば十分プロで勝負できる可能性はありますね。もちろん、今の状態での上位指名はリスクが高いですが、逆に言えば、下位で指名できるようになったと内心喜んでいる球団もあると思いますね」(関西地区担当スカウト)

 冒頭で触れたように、今年の高校生は目玉不在と言われており、さらに左投手となると、有力候補は毎年決して多くない。近年は故障を抱えてのプロ入りでも、その後のリハビリで完全に回復しているケースが増えている。

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