女性芸人バラエティ「トゲアリトゲナシトゲトゲ」が特別面白いワケ
女性同士の気安さ
そして、3人のバランスを支えるキーパーソンとなっているのが福田である。3時のヒロインでは、自由奔放でキャラの強い2人をまとめるしっかり者のツッコミキャラのイメージが強いが、この番組では完全なイジられ役である。仕切りを担当することもあるのだが、それよりも加納とサーヤから猛烈にイジられているときが面白い。
また、体を張った笑いを求められる場面では、ただパンストをかぶるだけで、日本エレキテル連合の「朱美ちゃん」のコスプレをするだけで、うねるような爆笑を巻き起こす。イジられて受け身を取るのが上手い福田は、本来はツッコミよりもボケの適性があるのではないか、とすら思うほどだ。
また、昨今では、男性芸人が女性芸人の容姿イジりをしたり、パワハラ的な振る舞いをすることに対して嫌悪感を抱く人が増えているため、当たりがソフトになっている。それ自体は社会全体にとっては望ましいことかもしれないが、女性芸人側からは「過剰に気を使われていると感じることもある」という意見もある。
その点、この番組では、女性同士ということもあって、お互いがお互いを気安くイジり合えるし、全力で体を張った笑いにも走れる。たとえば、「叩いてかぶってジャンケンポンをアップデートする」という企画では、今どきのテレビでは見たことがないくらい、女性が女性の頭を全力で叩いていて、息を呑むほど面白かった。
わかりやすいのでこれを例に挙げたが、単にこういった体を張る企画だけでなく、女性芸人同士が激しくボケ合い、ノリ合い、かぶせ合い、ツッコみ合う、という当たり前のお笑いを全力でやり続けているところが、この番組の最大の見どころである。
こういう番組がもっとあってもいいし、こういう面白さがもっと発掘されてもいい。「トゲアリトゲナシトゲトゲ」は、そんな来るべき時代の最先端に位置する意欲的な番組である。一方で、そんな小難しいことは関係なく、単純に面白いからみんな見た方がいい、ということも付け加えておきたい。
[2/2ページ]