女性芸人バラエティ「トゲアリトゲナシトゲトゲ」が特別面白いワケ

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 テレビ朝日では2020年10月から「バラバラ大作戦」というプロジェクトが始まった。これは、若手スタッフが中心になって制作する平日深夜に放送される1本20分のバラエティ番組枠の総称である。

 この「バラバラ大作戦」のレギュラー番組の中から、テレビ朝日スタッフと視聴者の投票によってグランプリを決める「バラバラ大選挙」という企画も定期的に行われている。最新回のバラバラ大選挙でスタッフ投票と視聴者投票それぞれで1位に輝いたのが、月曜深夜に放送されている「トゲアリトゲナシトゲトゲ」だった。

 3時のヒロイン・福田麻貴、Aマッソ・加納、ラランド・サーヤという若手女性芸人3人が出演する「トゲアリトゲナシトゲトゲ」は、2021年3月の放送開始以来、欠かさずチェックしている。内容が面白いのはもちろん、バラエティの歴史の中でも特筆すべき番組であると思うからだ。

 どういうところが珍しいのかというと、気鋭の女性芸人3人を集めて、真っ向勝負のお笑い番組をやっているところだ。それの何が珍しいのかと不思議に思う人もいるかもしれないが、これまでのテレビ界ではそういうタイプの番組はほとんど存在しなかった。

 ここ数年の間に、テレビに出る女性芸人の数はどんどん増えているし、お笑い界でも女性芸人の割合が増えてきた。しかし、数が多くなっている割に、テレビでの扱われ方は一定の範囲に収まっているような感じがあった。

 テレビに出る芸人は「芸人(お笑いをやる人)」であり「タレント」であるという二面性を持っているものだが、女性芸人はどちらかと言うとタレントとして扱われることの方が多かった。

 トーク番組で恋愛について語る、イケメンタレントをもてなす、スイーツをおいしそうに食べる。そんな「女性らしさ」を求められる場面が目立っていて、純粋に芸人として笑いを求められる仕事は男性芸人に比べると少なかった。

 その点、この番組では女性芸人だけの布陣でひたすら「お笑い」だけを追求してきた。人気のあるアイドルをレギュラーに入れたり、グルメ情報を盛り込んだりするなど、数字稼ぎのための保険を打つこともほとんどない。3人の芸人としての実力だけで番組を成り立たせている。シンプルだからこそ挑戦的な番組である。

 成功の秘訣は、レギュラー3人の個々の能力の高さと、絶妙なバランスにある。3人とも頭の回転が速く、しっかり者に見えるタイプだが、この番組では振り切った態度で全力でお笑いをやっている。

 加納は、前衛的なネタを量産したり小説やエッセイを執筆したりする女性芸人界きっての才人であり、近寄りがたいオーラを放っているが、この番組では仲間内ではしゃいでいるような温かみを感じさせる。

 サーヤもコンビでは社会不適合者キャラの相方のニシダを一方的にイジり倒す役割であり、個人事務所の経営者でもある。しかし、この番組では一番年下ということもあり、お姉さん的な立ち位置の2人に甘えて好き放題にボケまくる末っ子キャラを打ち出している。

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