京都の「百寿者の町」秘密は最強の善玉菌・酪酸菌だった 高齢者の腸内フローラに驚きの特徴が
古代人の腸内フローラデータ
他方、千年以上前の古代人の腸内フローラデータを便の化石から調べた結果が報告されました。すると、古代人の腸内フローラもF門が多く、B門はほとんど含まれていなかったためFB値は大きかった。しかし、牛肉も砂糖も摂取していなかった古代人が肥満であったはずがありません。
さらに古代人、現代の田舎に暮らす人、都会に住む人、3者のデータを比較してみると、肥満傾向が高いと思われる現代の都会人が最もF門が少なかった。すなわち、必ずしもFB値が大きいことが「肥満」に直結するわけではなく、逆に言うとFB値が小さいことが即「非・肥満」を意味するのでもなく、FB値の小ささは、一義的にはF門(≒善玉菌)の割合が小さいがゆえに、腸内フローラの多様性が失われていることを示しているといえます。現代の都会人は、動物性の脂肪や砂糖といった“不健康なもの”をあまりに多く摂取しているため、F門の酪酸菌が減り、腸内環境が悪化しているというわけです。
メタボ、糖尿病の予防にも
こうして、京丹後の長寿の秘密のひとつが酪酸菌であることがより裏付けられたわけですが、この酪酸菌は、大腸に良い影響を与える以外にも、さまざまな素晴らしい力を秘めていることが最近の研究で明らかになってきています。
まず、酪酸菌は炎症やアレルギー反応を抑える免疫細胞である「制御性T細胞」の分化を誘導するため、体内の酪酸菌を増やせば炎症やアレルギー反応を抑えられます。
次に、酪酸によって代謝が改善されたり、免疫が向上することも分かっています。したがって、メタボや糖尿病の予防などにも、酪酸菌は効果を発揮するのです。
ちなみに、京丹後市の高齢者に最も多かったのはロゼブリア菌と呼ばれる酪酸菌ですが、日本を含む5カ国のデータを解析した研究では、パーキンソン病に罹患した人はそうでない人に比べてロゼブリア菌が顕著に少なかった。また、新型コロナ感染症患者は重症度が高いほどロゼブリア菌が少ないという研究結果が報告されています。
このように、いろいろな面で私たちの体を健康にしてくれる力を持った酪酸菌を、ではどうやって増やせばいいのでしょうか。
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