統一教会は信者獲得のためではなかった……宗教団体がわざわざ政治に接近する理由
生長の家とのつながり
小川:統一教会は日本に来ても、「冷戦の最前線である韓国から来ました。我々は共産主義は嫌いです」といった売り方をするわけです。実際、文鮮明は朝鮮戦争の直前に、北朝鮮軍に捕まって牢獄に入れられたこともあるそうですから、一定の説得力もあったようです。当時は、左翼運動が盛んな時期でしたから、安倍元首相の祖父である岸信介や笹川良一も、これは使えると考えたのかもしれません。
――昭和の妖怪・岸、右翼のドンと呼ばれた笹川は、文鮮明が創立した反共主義の政治団体・国際勝共連合で結びついたと報じられている。だが、それだけではない。
小川:1960~70年代、日本では左翼系の学生運動が盛んでした。これに対抗したのが保守派の全国学生自治体連絡協議会(全国学協)という組織です。中心となったのが生長の家の学生組織・生長の家学生会全国総連合であり、それと共闘したのが原理研究会でした。
――原理研究会といえば、統一教会が大学生を勧誘するための関連団体である。それが生長の家と繋がりを持っていたというのは意外だ。
小川:生長の家の古い信者に話を聞くと、統一教会とは非常に親しかったと言うんです。今でこそ、世間で右翼的な発言をする人は少なくありませんが、左翼運動が盛んな頃にそうした発言をする人はほとんどいませんでした。ですから、例えば大きな会場に2000人くらい人を集めなければいけないという時に、統一教会に500人くらい動員を頼んでいたと言うのです。生長の家信者だった自民党参議院議員、玉置和郎が勝共連合の顧問に入っていたことも象徴的です。その全国学協が流れ流れて、後の日本会議へと繋がっていったのです。
――日本会議は保守系団体では日本最大の組織といわれ、安倍元首相とのつながりもあった。
立正佼成会とのつながり
小川:現在、騒ぎになっている統一教会ですが、我々が思っている以上に政治との繋がりの歴史が長いのです。そうなると昔から付き合いのある政治家としては、統一教会はなかなか切りにくい組織なのでしょう。もちろん、霊感商法や高額献金などの負の側面が今問題視されているわけですが、政治家にすれば、「高額な壺を売っているから明日から来ないでくれ」とは言いにくいのでしょう。
――日本で統一教会の拡大に一役買った日本人がいる。
小川:1964年、統一教会は日本で宗教法人の認可を受けました。その時、日本の統一教会初代会長に就任したのが久保木修己という人でした。この人は、岸信介の前でも動じることなく、カリスマ的な存在感があったそうです。国際勝共連合の初代会長も務めました。ところが、この人、元々は立正佼成会の幹部だったんです。
――期せずして、アンチ創価学会の生長の家と立正佼成会が、ここでまたつながった。
小川:統一教会は、冷戦時代は反共で政治に関わろうとしていたと思います。しかし、今となっては、純粋な目的で政治に関わろうとは思っていないのではないかと思います。
――では、なぜ今も特定の候補者の選挙を手伝ったりしているのだろう。
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