中国の「極超音速ミサイル」に日本の最先端技術を流用か 注意すべき「スパイ留学生」の実態
中国の明白な意志
もはや中国は明白な意志をもって、経済的影響力を通じて周辺諸国をひざまずかせようとしている。サプライチェーンの見直しが個別企業の安全に留まらず、日本の安全保障に直結していることがお分かりいただけるだろう。
二つ目の柱は、国民生活の土台となる基幹インフラの安全確保だ。通信、電力などの各種エネルギー、水道、輸送といった基幹インフラのほとんどは、いまや情報通信技術で支えられている。ここがサイバー攻撃を受けて通信や物流が遮断されたりかく乱されたりすれば、私たちの日常生活はすぐに立ち行かなくなる。
だからこそ、基幹インフラ関連事業者は、設備投資の際にマルウエア(悪意のあるプログラム)の有無や、バックドアなどのスパイ機能が仕込まれた機器の購入の回避、取引先企業と懸念国の資本関係の有無などを確認する必要がある。
過日、中国国営企業の上海電力が日本法人を通じて台湾有事の際に防衛の要となる、山口県の岩国基地の近くに設置されていた7万5千キロワットもの大規模太陽光発電所を買収した。
前述の通り、中国には国防動員法がある。中国共産党の思惑で、有事の際に岩国基地へ影響が生じることはないのか。国の基幹インフラ事業に中国の国営企業の参入を許す、政府の姿勢には大いに問題がある。
日本の技術、生産物を経済的抑止力に
そして三つ目の「高度な技術開発における官民協力」とは、わが国が各国から依存されるような強みを持つことだ。仮にどこかの国が日本と深刻な対立関係に陥った場合、その国が日本に大きく依存する物品の輸出を制限することは、外交上の有利なカードとなり得る。
それこそ2年前に中国の医療用品の輸出制限で日本が混乱したように、経済活動や生活に必須な物品の輸入を日本に頼っている国は、ひとたび国内が混乱に陥れば、たちまち音を上げてギブアップするだろう。今後、日本の高度な技術や生産物は大いなる経済的抑止力となるのだ。
ただし、これには「セキュリティークリアランス制度」の導入が不可欠だ。これは秘密情報を扱う人物の適格性を確認する制度で、研究者を装って入国してくる他国のスパイ対策である。過去には国会で議論されたが、公明党などが個人情報の保護を理由に反対し、導入が見送られた経緯がある。
民間人を対象としたセキュリティークリアランス制度は、米、英、カナダ、豪、ニュージーランドをはじめ、欧州の主要国では導入されている。いまだ導入のメドすら立たない日本は、西側諸国との機密性の高い共同研究に参加できない不利益も被っている。とくに防衛関連や情報通信産業から、共同研究や製品発注などの話がもたらされても対応できていないのが現状なのだ。
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