中国の「極超音速ミサイル」に日本の最先端技術を流用か 注意すべき「スパイ留学生」の実態
恐怖の「国防動員法」
さらに中国政府は人民に国家への奉仕を強いるための法律を次々と成立させている。代表的なものが、有事の際に中国国内に拠点を置く企業が保有する在中資産の接収を可能にする「国防動員法」だ。対象には日本や欧米の企業も含まれ、発動された場合は少なくとも五つの事態が想定される。
(1)日本企業の在中資産(工場や事務所、倉庫、車両、製品その他資産、設備、装置、資材など)が、差し押さえや徴用、凍結される事態(国防動員法54条)。なお、この徴用や凍結の拒否はできない(同55条)。
(2)物流機能の停止、インターネットなど情報ネットワークの遮断、国際航空便、国内航空便の停止、輸出入貿易の停止、税関規制、交通制限、立ち入り禁止区域の設置、経営活動の停止、勤務時間制限、商業免許停止・剥奪、許認可の取り消し、各種行政規制の発動など。さらに現地法人の業務が一時的、または長期的に不可能になる事態(同63条)。
(3)中国の銀行口座の凍結や金融資産の接収、売掛金の放棄を強いられる事態(同63条)。
(4)日本企業の日本人経営幹部、駐在員、出張者が一時的ないし長期的に出国できなくなる可能性(同63条)。
(5)中国人社員が人民解放軍に参加したり銃後の業務で欠勤したりする場合、日本企業はその意向を支持して協力し、任務期間中の賃金や手当、福利厚生の全額を支給しなくてはならない(同53条)。
全ての国民にスパイ活動を強いる法律
外国企業が抱えるリスクはほかにもある。「国家情報法」の7条で、すべての国民にスパイ活動を強いており、「いかなる組織及び個人も法に基づき国家諜報活動に協力し、国の諜報活動に関する秘密を守る義務を有する」とされている。つまり、日本企業で働く中国人従業員や日本の大学に留学する中国人留学生が、企業や研究機関で知り得た機密情報を窃取する事態が憂慮されるのだ。
ほかにも、恣意的濫用が懸念される中国版エンティティ・リスト、輸出管理リストと輸出管理法をはじめ、裁判や法務当局とは関係なく政府の判断だけで外国や国内外企業への報復を正当化する「反外国制裁法」、国内で開発された技術や製造物などのデータの国外移転を厳しく管理・規制する「データ安全法」と「個人情報保護法」がそれぞれ施行済みだ。
習近平が率いる中国は、かつての指導者・トウ小平が掲げた「改革開放路線」を打ち捨てて、自身の権力基盤を盤石にする「統制と規制路線」へと舵を切った。そんな中国の無法を西側諸国も見過ごしてはいない。
米国は中国製造2049が、中国に莫大な利益をもたらし、米国から国際的な覇権を奪う意図がある、と受けとめた。すぐに議会も動き、2019年度国防権限法を成立させ、外国企業が米国の機微技術や軍民両用技術を持つ企業を買収する際は、対米外国投資委員会が厳格に審査するよう改めた。
英国や欧州連合(EU)においても、中国を念頭に置いた企業買収の厳格化を進めており、先端技術の海外移転に対する規制強化が着々とはかられている。
わが日本も例外ではなく、2020年に「外国為替及び外国貿易法(外為法)」を改正した。政府は武器や装備品をはじめ、航空・宇宙、原子力、電力、通信、鉄道、上水道などのインフラ事業をコア業種に指定。上場会社や非上場会社を問わず、事前申請対象を拡大して条件を厳格化する措置を講じた。
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