中国の「極超音速ミサイル」に日本の最先端技術を流用か 注意すべき「スパイ留学生」の実態
すべての人民にスパイ行為を、また外国企業には技術移転を強要する中国。かつての“世界の工場”は、経済面でも日本や西側諸国の深刻な脅威と化した。日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏が、我が国が直面する経済安全保障リスクの現実を解説する。【平井宏治/日本戦略研究フォーラム政策提言委員】
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去る5月11日、「経済安全保障推進法」が参議院本会議にて賛成多数で成立した。(1)半導体などの重要物資を安定的に確保するサプライチェーンの強化(2)サイバー攻撃を想定した電気や鉄道など14分野の基幹インフラに関する事前審査(3)宇宙や量子などに関連する先端技術開発における官民協力(4)原子力や自衛隊の装備品に関する特許の非公開という四つの骨子からなる法は、今後の日本の安全保障環境に大いに資することは明白だ。
にわかに注目を集める「経済安全保障」とは何か。法案の狙いとその課題を検証する前に、法整備が急ピッチで進められた背景を振り返っておきたい。
覇権主義国家と化した中国は、日本をはじめとする西側諸国が持つ高度な技術の取り込みをもとに、急激かつ圧倒的な軍事的拡大を進めている。国際法をものともせずに「力」による世界秩序の変更を目指すかの国の脅威は、いよいよ我が国の安全保障に留まらず、一般庶民の日常生活にも影を落とし始めているのだ。
経済面における安全保障が必要な最大の理由
例えば、コロナウイルスの感染が日本で広がった一昨年のことを思い起こしてほしい。街中のドラッグストアから、マスクや消毒用アルコールが忽然と消え、医療用手袋、ガウンといった医療関係者の必需品が手元に届かない事態が生じた。それにより、各地の医療現場では手術どころか診療もままならない事態に陥った。
その理由は、日本で使用されている医療用手袋などの9割以上が中国製に頼っていたからだ。当時は「サプライチェーンの問題」と繰り返し報じられたから、ご記憶の方も多いだろう。
中国に限らず、特定の国や地域に医療用品の調達を頼っていては、相手国との関係が悪化して輸出を止められた場合、途端に医療崩壊が起きてしまう。これが経済面における安全保障が必要になった最大の理由だ。
独裁国家の中国は、軍拡と経済成長が一体化した歪な国だ。技術開発は軍事組織がリードし、その成果を民間企業が生産・販売して国家の経済成長を図る。この方針は「軍民融合政策」と呼ばれ、人民の生活や権利など二の次として国力増強を目指す。
軍民融合政策の背景にあるのはハイテク技術を駆使した戦いだ。現代における戦い「智能化戦争」と呼ばれ、主に人工知能(AI)や高速インターネット通信、自動運転技術といった最新技術が“兵器”に活用される。中国は超大国であるアメリカに勝利を収め、自国に有利な世界秩序に変更することを企図している。
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