いまだに妻の本音がわからない…彼女の友人と浮気で、さらに悩みが深くなった50歳男性の告白
瑠璃子さんの衝撃的な一言
自分の知っている妻とは違う。清士さんは愕然としながらも、そうかもねと瑠璃子さんに笑顔を見せた。すると瑠璃子さんは、衝撃的な一言を口にした。
「さっきもね、由紀乃は私に『うちの夫を誘惑してみて』って言ったんですよ。私は友だちの夫を寝取るような趣味はないからと答えたけど、彼女、もしかしたら浮気しているんじゃないかな」
そんなバカな、と清士さんは絶句した。潔癖症のような妻が、そんな言葉を吐くはずがない、いや、もしかしたら自分が見ていた妻はごく一面に過ぎなかったのか。いろいろな思いが去来した。
途中で事故による通行止めがあったりして、瑠璃子さんを送り届けて帰宅したのはかなり時間がたってからだった。
「駅までのはずが家まで送り届けるはめになっちゃってさ、と言い訳しながらリビングに入っていくと、妻はソファでうたた寝していました。邪気のない顔だった。妻の秘密は、そのまま知らないふりをしていようと決めました」
私の問いに不機嫌になった清士さん
それなのに、清士さんはその数週間後、新しい取引先として訪問した企業で瑠璃子さんに会ったとき、彼女の華やかな魅力にクラクラとした。こんな偶然ってあるのかしらと瑠璃子さんも驚いていた。
「瑠璃子さんと関係をもったら、きっと妻にはバレてしまう。そんなことはわかっていたのに、僕は瑠璃子さんと食事に行き、誘われるままに彼女の自宅へ行きました。心のどこかで、こういうことをしたらさすがに妻も本音でぶつかってくるのではないかと思っていたのかもしれません。もちろん、瑠璃子さんは魅力的で彼女に恋する気持ちもありましたが、どちらかといえば妻の本音を探りたいほうが強かったような……」
妻との関係が、不安定なものだったことが清士さんのストレスになっていたのではないだろうか。夫を支える献身的な妻という位置にしっかりおさまっている由紀乃さんと比べ、清士さんは妻との関係を「役割以上」のものに変えたがっていたのだから。そのストレスのはけ口に瑠璃子さんを利用し、妻の心を試したのではないのか。
「そんなつもりはなかった……と思います。少なくとも意識はしていなかった。なんだかつまらないから、ちょっとグレてやるというような反抗的な気分はあった。精神的に幼いと思われるかもしれませんが、男ってそんなもんでしょ」
清士さんが少しだけ不機嫌そうな顔になった。「男ってそんなもんでしょ」と男性が言うとき、当の本人はどこか「情けない男のほうが魅力があるでしょ」「そういう欠点に気づいている僕ってすごいでしょ」と思っているような気がしてならない。自虐的な分析は、実は女性を苛立たせる要素になることもある。
清士さんは社会人として立派な肩書きもあるし、話し上手で魅力的な男性ではある。だが、それは距離がある関係だからこそ。こういう人と結婚すると、意外と「めんどくさい」のかもしれない。妻はそれを感じて、距離を縮めようとしなかったのではないだろうか。
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