いまだに妻の本音がわからない…彼女の友人と浮気で、さらに悩みが深くなった50歳男性の告白

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妻とケンカしたかった

 由紀乃さんは結婚を機に退職、近くのショッピングセンターでパートとして働くようになる。家事も万端、ぬかりがない。朝は早くから起きて手の込んだ弁当を作ってくれた。

「本当にいい妻だと思っていましたが、ひとつだけ問題があった。彼女は夫婦の夜の生活が苦手だったみたいなんです。いつも歯を食いしばって耐えているようで……。かわいそうになって、僕は徐々に求めなくなっていきました。ただ、彼女は両親から孫はまだかと言われていたらしく、ときおり自分から僕のベッドに入ってくる。なんだかけなげというか、複雑な気持ちでしたね」

 結婚して5年近くたって、ようやく妊娠し、娘が産まれた。妻はホッとしたのか、産後はなかなか心身の調子が戻らなかった。

「娘が2歳になったころ、妻が検診でひっかかり、初期の子宮がんが見つかりました。医者からはもう少し様子を見てから判断しましょうと言われたんですが、妻は怖いから全摘したいと言い張った。なんでも母方の伯母が子宮がんで亡くなったとか。そこまで本人の意志が強いならどうしようもありませんでした」

 子宮と卵巣を全摘、初期で悪性度も低かったため、そのまま完治となった。清士さんは今でも、そこまでする必要があったのかと疑念を抱いている。妻はもう子どもを産みたくなかったのではないか、と。妻の本音はわからない。

 その手術のあと、由紀乃さんとは完全に夫婦生活がなくなった。

「それでも娘を中心に家族3人、仲よく暮らしてきたつもりです。妻は相変わらず、うまく僕をおだてて手のひらで転がしてくれたし、僕を苛立たせるようなこともなかった。だけど、そんな生活がだんだんウソっぽく思えてきちゃったんですよね」

 彼自身が望んだことだ。内心では夫に対して「バカみたい」と思っても、そう言わずに夫をおだてながらうまく操縦してほしい、と。本音をさらさずに建前だけで、「うまくやる」ことを優先させたのは彼自身だ。

「そうなんです。それはわかっているんだけど、適当におだてられて適当に振る舞っている自分がウソっぽかったし、そのウソにつきあってくれている妻にも不信感を抱くようになってしまった。だから娘が小学校に入ったころ、『オレたち、もうちょっと本音で話してもいいんじゃないか』と言いました。すると妻は『私はいつでも本音よ』って。ウソだ、と思わず声を荒げました。僕は妻とケンカしたかった。それぞれ心をさらけ出して好きなように言い合って。僕が育った家庭では、そんなことはありませんでしたし、親を規範としていたけど、実際に結婚生活を送っていくうえで、そんなの嘘っぱちだと思うようになっていた。明らかに僕の考え方が変わったんですが、妻はそれを認めてくれなかった」

 人は変わっていくものだし、関係も変化をしつづけるもの。だが、妻は歩調を合わせられなかったのかもしれない。

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