世界に3点しかない「ゲルニカ」がなぜ群馬県に? 9600万円で購入「今思えば安い」
世界に三つしかない真正の作品
誰もが知っている名画「ゲルニカ」。1937年、ドイツ空軍によるスペインの町ゲルニカへの無差別爆撃を主題とした、ピカソの作品である。その「ゲルニカ」が実は群馬にあるというから驚くのである。
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群馬県立近代美術館では現在、所蔵するタペストリー版「ゲルニカ」が展示されている(~8月28日)。“なんだ、タペストリーか……”などと侮ってはいけない。ピカソがフランスの工房と制作した、世界に三つしかない真正の作品で、米ニューヨークの国連本部、フランスのウンターリンデン美術館、そしてここ高崎市でしかお目にかかれないのだ。
大きさは原作絵画よりも少しだけ小さく、縦3.28メートル、横6.8メートル。11色のウールと綿で織りなされ、染色方法などはピカソが指示した通り。巨匠はその灰色のニュアンスをいたく評価していたとか。光による劣化を防ぐため、1年のうちに展示できる期間は限られているという。
「1996年、当時の館長が“他の所蔵品と合わせて戦争をテーマに展示ができる”と購入を決めました。タペストリーはしょせんレプリカだ、と考える人が多くて、買い手がつかなかったのだと思います。9600万円でしたが、いま思えば安い買い物です」(担当者)
ピカソは「ゲルニカ」をわずかひと月で仕上げた。その準備スケッチも展示されているので、完成への過程も味わえる。ロシアのウクライナ侵攻で、戦争がいつになく身近になった今、“名画”の前にしばしたたずみ、ピカソのメッセージに思いをはせてはいかがだろうか。
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