「FIREしても家事は死ぬまで続く」 作家・原田ひ香さんが「お金」「節約」をテーマに小説を書く理由
「家事は死ぬまであるよ」
原田:時代の変化という意味で言うと、『財布は踊る』では「そもそも節約は主婦のものなのか」というテーマにも触れています。例えば、いわゆる節約はしていなくても、投資やポイ活に精を出している男性は多いんですよね。FIREブームの主体も男性ですし。
ただ言いたいのは、「家事は死ぬまであるよ」ということ。もし男性が家事をしないなら、女性は一生FIREできなくなってしまう。SNSなどでFIRE後に休むつもり満々の男性を見ると「大丈夫?」って。FIRE自体はいいと思いますし理解もできるけど、ずっと家にいるってお互い大変な部分もあると思いますね。
尾崎:昔の女性は結婚をFIREと捉えてた部分もあるのかもしれないですね。でも、その後が大変なのはFIREでも同じだと思います。一度ゴールした後、どう生きていくの?という。
原田:リモートワークの普及で40~50代の女性からは「退職後のシミュレーションができた」という声もよく聞きます。夫がずっと家にいるとこういう感じなのか、と。
尾崎:コロナ禍で女性の家事負担が増えたという声も聞きますね。二人で食べるとなると、お昼ご飯もこれまでよりちゃんと作らないといけない、という人も。一方で、「ESSE」読者の中には、コロナ禍で家族の仲が良くなったという人も多いんですよ。専業主婦の方が夫の仕事の大変さが理解できたり、逆に夫が家事に関わるようになったりして、相互理解が進んだケースもあるようです。
「食費3万円」は可能か
原田:小説家になってすぐの頃は女性主人公しか書いていませんでした。そもそも男性があまり出てこないし、出てきてもダメな人ばかり(笑)。結局、女性の方が好きなんだと思います。今の社会は男性が委縮しているような印象も受けますが、主婦雑誌を読んで「これくらいの収入でも結婚できるよ」というのを知ってほしいですね。
尾崎:雑誌で食費が月に3万円の家族を紹介すると「こんなのうそだ」と反発する人もいるんですが、個人的には「意外と3万円でいけるよ」と思っています。
原田:『財布は踊る』のみづほも節約料理を作りますが、小説の節約レシピは、SNSやYouTubeを参考にしながら、実際に自分で作ってみた経験を基に書いています。今は、カツをどこまで薄くできるか研究中なんです(笑)。意外と薄い肉でもおいしくカツにできることが分かりました。
尾崎:「ESSE」読者でも「とりあえず揚げちゃう」という人は多いですね。
原田:野菜の天ぷらはコスパが良くて贅沢感もあります。くず野菜でもかきあげにしたら豪華な感じになりますし。スーパーの企業努力で最近は総菜もおいしいものが増えました。
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