「FIREしても家事は死ぬまで続く」 作家・原田ひ香さんが「お金」「節約」をテーマに小説を書く理由

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「節約小説」誕生秘話

 家計やお金をテーマにして60万部超えのベストセラーとなった『三千円の使いかた』(中央公論新社刊)の作者であり、7月27日に『財布は踊る』(新潮社刊)を上梓した作家の原田ひ香さん。そんな原田さんが、生活情報誌「ESSE」の尾崎統括編集長と対談。節約、家計をテーマにした理由、そして注目を集めるFIRE(経済的に自立し、早期退職すること)に思うこととは――。

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原田ひ香(以下、原田):家計をテーマに小説を書こうと思ったきっかけは15年前ほど前。美容室で手に取った雑誌で「年収200万円台で年間30万円貯金する」という家族が登場していて衝撃を受けたんですよね。早速編集者に連絡して「この題材は絶対に小説になるからやりたい」と伝えて。実際に物語化するのは苦労しましたね。『三千円の使いかた』を出したのは4年前で、結構時間がかかりました。

尾崎統括編集長(以下、尾崎):『三千円の使いかた』を読ませていただいて、まず「この題材って小説になるんだ」という驚きがありました。それまで「節約」って世間からはちょっと馬鹿にされていたような印象もあって。節約記事に対して、社内にも「みみっちい」みたいに言う人もいましたから(笑)。

原田:確かに、「使い終わったストッキングを切ってゴミ用のネットにするなんて」みたいに、揶揄される部分もありましたね。でも、私は節約テクニックをいろいろ見ていて、「もやしや鶏肉を有効活用しまくる」みたいにシステム化されている部分が非常に面白いなと思ったんですね。

『三千円の使いかた』を書いた頃って、奥さんや専業主婦が幸せそうな小説、ドラマがあまりなくて、逆に不倫モノがはやっていました。でも、「ESSE」などの生活情報誌のページをめくると、ご自身の見た目に気を使っていて、旦那さんもかっこよくて、幸せな夫婦がたくさん登場しますよね。私はそれを描きたかった。確かに「普通の主婦」って小説にはなりにくいんですけど、お金という軸があればいけるんじゃないかと。

政治、経済が主婦雑誌に反映される理由

原田:主婦雑誌の面白さに気付いてから定点観測するようにしていたのですが、「いつかは100万円!」と言っていた人たちが「目標1千万円」と言うようになっているのに気付きました。ちょうどこの時期は経済が上向いたタイミングでした。

 他にも、数年前でしょうか、就職売り手市場になったタイミングで、主婦雑誌に「主婦の再就職」というテーマが増えたんです。政治、経済といった時代の動向が主婦雑誌にもダイレクトに反映されるのが面白いですよね。

尾崎:周りからは「同じことをずっとやってる」と言われちゃうんですが(笑)、小さなブームがあるんですよ。20年前は専業主婦向けでしたが、今は「ESSE」読者の多くは働いています。なので極端な節約方法よりは、働きながらでも実践できる節約術の方が役に立つようです。

原田:昔はエリートの女性だけが結婚しても働き続ける、というイメージで、今も無意識に「子どもができたから退職する」という描写を小説に入れてしまうことがあるんです。でも、編集者から「現実はそうじゃない。働かないと生活できないんです!」と言われたりしますね(笑)。

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