欧米はウクライナになぜ「HIMARS」や「NASAMS」をもっと供与しないのか

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ウクライナの厭戦気分

 アメリカの武器供与からは、「ロシア軍の勝利も困るが、ウクライナ軍の反攻も困る」という本音が透けて見えるという。

「あまり欧米がウクライナ軍を強くしてしまうと、ますますロシアが態度を硬化させる危険があります。ウクライナとロシアが協議のテーブルに着く気運が失われてしまうのを、欧米各国は恐れているはずです。今、欧米各国のトップは、年内の停戦を画策しています。そのためには戦線が膠着し、ロシア軍とウクライナ軍が対峙して動かないのが理想なのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 戦局が膠着すればするほど、ロシアに有利という点も大きいという。

「ウクライナの人々にとって、今回の侵攻は文字通り『自国の戦争』です。多くの民間人が犠牲になっており、いつ自分が死ぬか分かりません。一方、ロシアの場合、戦死した兵士の両親にとっては悲痛の極みでしょうが、本国は戦場となっていません。大多数の国民にとっては、まだまだ『他国の戦争』なのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ロシア軍の攻撃方法も、「ウクライナの国民に厭戦気分を蔓延させる」という狙いが読み取れるという。

「NASAMS」は無意味?

「6月27日、ロシア軍のミサイルがウクライナ中部のショッピングセンターを攻撃し、少なくとも16人が死亡したと報じられました。攻撃には対艦ミサイルが使われた可能性が取り沙汰されています。ロシア軍としては、対地だろうと対艦だろうと、使えるミサイルは何でも使ってウクライナ本土を攻撃し、『早く戦争が終わってほしい』という世論を形勢させようとしているのでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 実際にウクライナ政府は、ロシアのミサイル攻撃で、かなり追い詰められているようだ。

「追加支援策に、アメリカとノルウェーが共同開発した地対空ミサイルシステム『NASAMS(ナサムズ)』が含まれています。よほどロシアのミサイルに手を焼いているのでしょう。さっそく欧米や日本のメディアが注目し、アメリカによる兵器供与の目玉として報じていますが、やはりこの報道にも注意が必要です」(同・軍事ジャーナリスト)

 どうして注意が必要なのかと言えば、供与の内容を見れば分かる。HIMARSと同じで、たったの2基なのだ。

「NASAMSはホワイトハウスや国会議事堂の防御に採用されています。2基の供与は、確かにキーウの大統領府を守るには有効かもしれません。しかしながら、ウクライナの様々な都市を無差別に攻撃するロシアのミサイルに対しては、ほとんど無力だと言わざるを得ません」(同・軍事ジャーナリスト)

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