山上容疑者の求刑・判決は「無期懲役」が有力か 「安倍元総理が被害者であることは影響しない」

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「独裁国家なら…」

 山上の場合はどうか。

「安倍さんが統一教会の関連団体に寄せたビデオメッセージを見て、安倍さんと統一教会に深い関係があると考えた。例えば、Aさんを憎んでいるのに、たまたま会ったBさんに襲い掛かるなど、動機と行為が結びつかない場合、責任能力に問題ありと判断されます。山上の場合は、統一教会への憎悪が安倍さんに向いた。動機と行為が一応結びついていると理解することができます」(同)

 実際の判決について、元裁判官で弁護士の井上薫氏は、事件についての情報が少ないと留保しながらも、

「殺意が強く、犯行も用意周到ですから、罪はやはり重くなると思います。死刑にはならないにしても、無期懲役になる可能性があるのではないでしょうか」

 先の若狭氏も、

「無期懲役の求刑・判決がもっとも考えられます」

 と、こう続ける。

「永山則夫の事件で示された『永山基準』をはじめ、過去の判例の蓄積から、殺害された被害者の数が複数でないと死刑になりにくい。ひとりでも死刑になるのは殺し方が残忍な場合です。例えば、生きている人間を火であぶったり、電動のこぎりで首を切り落とすなど、身震いするような殺害方法なら死刑はあり得ます」

「無期懲役」が有力か

 とはいえ、今回は一国の総理を務めた人物。それも憲政史上最長政権を築き、世界の指導者と伍した元総理が被害者という点は考慮されないのだろうか。

「例えば独裁国家で独裁者を殺せば、死刑かもしれませんが、今回は現職の総理でもなく、政府を転覆させようというつもりもない。安倍元総理が被害者であることは判決に影響しないのでは」(井上氏)

 若狭氏はむしろ、情状酌量について指摘する。

「殺害の動機が、統一教会によって母親と家族の生活がめちゃくちゃにされた、ということならば、裁判員裁判での情状酌量の余地はあると思います。ただ、一概に無期懲役を有期刑に減刑するまでの情状酌量になるかというと、その点については裁判員と裁判官によって意見が異なるのではないでしょうか」

 やはり「無期」が有力とみる。しかし、皮肉にも、山上が放った凶弾は狙い通り、統一教会の「カルト」ぶりと政界との癒着をあぶり出している。いかなる量刑になろうと、かような状況を作り出せたことが彼の本望だったに違いない。

週刊新潮 2022年8月4日号掲載

特集「底なし政界汚染 安倍元総理と『統一教会』ズブズブの深淵」より

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