安倍氏追悼演説先送り 甘利明前幹事長には評価を上げる選択肢が一つだけあったのに
首相経験者がベスト?
自民党議員の“人物評”に耳を傾ければ、甘利氏の人品骨柄が見えてくるという。
「『優秀な政治家ですよね』と評する自民党議員はたくさんいます。しかし『立派な政治家ですよね』と言う人はいません。甘利さんは策士的な側面をお持ちですが、ご本人は首相を目指している。だから策士としては脇が甘い。普通なら、あんなメルマガは発表しません。安倍派の猛反発を招くことは誰でも予想できます」(同・伊藤氏)
追悼演説は甘利氏──と報じられた時、なぜ与野党の国会議員は反発したのか、伊藤氏はシンプルで明快な理由があると言う。
「政治の世界は残酷なほど“格”を重視します。首相経験者である安倍さんを追悼するだけの“格”を持つ政治家といえば、自動的に首相経験者を想定するのが普通なのです」
自民党の首相経験者なら、森喜朗氏(85)、小泉純一郎氏(80)、福田康夫氏(86)、麻生太郎氏(81)、菅義偉氏──といった顔ぶれになる。
「野党の場合なら、野田佳彦さん(65)が候補の1人でしょう。野田さんが首相だった2012年、野党の自民党総裁だった安倍さんと党首討論を行い、総選挙を実施することが決まりました。安倍さんとの“縁”という観点からも、野田さんは適任だと言えます。いずれにしても、自民党であっても野党であっても、首相経験者が追悼演説を行うと発表されれば、異論は出なかったのではないでしょうか」(同・伊藤氏)
自民党の傲り
もはや手遅れだが、甘利氏に批判が集中するという事態を避ける方策がたった一つだけあったという。
「もし甘利さんが『追悼演説のような大役を務めるのは私には無理です。他の方に頼んでください』と固辞し、それがマスコミを通じて報道されたとしたら、甘利さんに対する評価は上昇したかもしれません」(同・伊藤氏)
そもそも安倍元首相の国葬を行うと発表された時点で、有権者の賛否は大きく割れた。更に、甘利氏の追悼演説が報道されると、有権者は強い拒否反応を示した。伊藤氏は、この2つは通底していると言う。
「国葬の問題も甘利さんの問題も、共に前例を無視しています。自民党の傲(おご)りを象徴していると言えるでしょう。『野党に配慮する必要なんてない。自分たちが正しいと思う方法で葬送を行う』と考えているようなのです。しかし、国葬の問題はいまだに世論を二分しており、甘利さんの追悼演説は取り下げざるを得なくなりました。場合によっては、まだまだ世論の反発は続くかもしれません」」(同・伊藤氏)
[4/5ページ]