安倍氏追悼演説先送り 甘利明前幹事長には評価を上げる選択肢が一つだけあったのに
安倍=甘利の人間関係
ここに来て、メルマガの問題も再浮上する。
毎日新聞は同29日、「安倍元首相銃撃 追悼演説延期 甘利氏へ反発強く 安倍派から批判」の記事を掲載した。
追悼演説が先送りされた理由を、《銃撃事件で会長の安倍氏を失った自民党安倍派(清和会、97人)で批判が強まったことが大きな要因》と伝えた。
《(註:甘利氏のメルマガに)安倍派最高顧問の衛藤征士郎・元衆院副議長は21日の同派会合で「こんなに侮辱されたことはない」と激しく反発。派内では他にも「甘利氏こそカリスマ性がない」などと批判する声が相次いだ》
毎日新聞は《「なぜ安倍氏が残した派閥をばかにする甘利氏に演説させるのか」》という安倍派議員の声を伝えているが、これが本音であることは明らかだろう。
しかし、ベテランの政治記者によると、これでも真相の半分しか明らかになっていないという。
「一時期、日本の政治は“3A”が動かしていると言われていました。安倍さん、麻生太郎さん(81)、そして甘利さんです。安倍さんが甘利さんを頼りにしていたことは、永田町関係者であれば誰もが知っています。ことあるごとに安倍さんは甘利さんの携帯を鳴らし、アドバイスを求めていました。こうした2人の関係を把握していれば、安倍さんのご遺族が甘利さんに追悼演説を依頼したという報道を見ても、違和感は覚えなかったはずです」
敵の多い甘利氏
結局のところ、安倍氏の遺族から見た甘利氏と、多くの自民党議員から見た甘利氏とでは、印象が大きく違うものだったという。
「誤解を恐れずに言えば、人徳がないのです。切れるタイプなのかもしれませんが、頭の良い政治家が優れた政治家だとは限りません。本当に重要なのは人柄です。真の実力者ほど『あの人のためなら何でもする』と“子分”を心酔させるだけの人間的魅力を持っています。これこそが甘利さんに最も欠けている点だと言っていいのではないでしょうか」(同・ベテラン記者)
政治アナリストの伊藤惇夫氏も、「甘利さんが自民党内でも“敵”が多いことは、事実と言わざるを得ません」と言う。
「第1に、UR都市機構の口利き疑惑に関する報道が、かなり影響を与えました。少なからぬ自民党議員が、『甘利さんは説明責任を全く果たさなかった。あれが甘利さんの人柄を象徴している』と失望したのです。第2に、菅義偉前首相(73)に近い人であればあるほど、いわゆる“菅おろし”の首謀者は甘利さんだと考えているということです。真偽はどうであれ、この2つが甘利さんに“敵”が多い理由でしょう」
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