安倍氏追悼演説先送り 甘利明前幹事長には評価を上げる選択肢が一つだけあったのに
政治家として最大の屈辱──。憲政史上、前代未聞の珍事と言って差し支えないだろう。臨時国会で元首相の追悼演説を担当すると報道されたにもかかわらず、それが“ご破算”となってしまったのだ。
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【写真を見る】36年前、昭恵さんとの結納を済ませた安倍晋三元首相。当時32歳。
FNNプライムオンラインは8月1日、「【速報】安倍元首相の追悼演説は今秋の国会実施で合意」と報じ、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。
そもそも7月29日、毎日新聞と産経新聞が「自民党が8月の臨時国会で実施する予定だった追悼演説を先送りする」と報じていた。両紙の見出しを引用させていただく。
◆安倍元首相追悼演説を先送りへ 甘利氏起用に与野党異論(産経新聞)
◆安倍元首相銃撃 追悼演説先送り検討 自民幹部「静かに見送りを」(毎日新聞)
追悼演説を担当すると報道されていたのは、甘利明前幹事長(72)。彼の胸中や如何……と書きたくなるが、永田町で甘利氏を同情する声は少ないという。
何が起きたのか、まずは時系列を追ってみよう。7月8日、奈良県で遊説中だった安倍晋三元首相(享年67)が凶弾に倒れ死亡した。
その後、甘利氏の名前が最初に報じられたのは、追悼演説の文脈ではなかった。自身のメールマガジンでの“暴論”が注目を集めたのだ。毎日新聞が7月21日の朝刊に掲載した「『安倍派、誰もカリスマ性ない』 甘利氏、メルマガで」の記事を引用する。
《自民党の甘利明前幹事長(麻生派)は20日、自身のメールマガジンで、会長の安倍晋三元首相を銃撃で失った安倍派について「『当面』というより『当分』集団指導制をとらざるを得ない。誰一人、現状では全体を仕切るだけの力もカリスマ性もない」と述べた。そのうえで「今後、どう化けていくのかが注視される」と指摘した》
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