「2億円超」受領疑惑の「高橋治之」元理事、五輪ビジネスの「裏」を知り尽くした男の知られざる錬金術
電通社員の関与が
高橋氏をよく知る人物が教えてくれた。
「日本馬術連盟は、JOCの竹田恒和前会長がいまも副会長を務める団体です。2009年からAOKIが協賛を始めた日本ゴルフ協会の会長はつい最近まで竹田恒和氏の兄・恒正(つねただ)氏が会長でした(現在は名誉会長)。高橋氏が大学時代から親しい竹田兄弟と何かを企んでいた臭いがプンプンします」
確かに、旧知の人脈を使った錬金システムにAOKIを巻き込んだ気配が窺える。AOKIにすれば、馬術とセーリングの強化費を負担することで東京2020のオフィシャルサポーター契約締結が盤石になればとの思いがあったのではないだろうか。
捜査当局は、受託収賄罪を立証するため、高橋氏が組織委員会内でスポンサー契約に関与する権限があったこと、実際に担当者に働きかけた裏付けを進めていると見られていた。東京2020組織委員会の清算法人や電通の家宅捜査をしたのはそのためだと。
だが新たに、「2億3000万円は電通の子会社を経由して高橋氏の会社に渡った」と報じられたことで、電通社員の関与が濃厚になった。この報道を受けて、組織委員会の関係者が話してくれた。
「これは本当にショックだし、ビックリしています。組織委員会はコンプライアンスを徹底し、全員が肝に銘じて取り組んでいました。電通からの出向社員たちも『高橋さんには気をつけろ!』と、徹底して忠告されていたと聞きました」
協力者の可能性
電通がかつて高橋氏らのやり方でバブリーなスポーツビジネスを展開していたことは、半ば公然と承知されている。その担い手たちのインタビューが武勇伝的に語られている書籍もある。しかし、時代は大きく変わった。体質改善を図り、古き悪しきビジネスモデルからの脱却を進めなければ電通といえども生き残れない。
それでもこのような事件が起こった。電通の社内に高橋派というか、かつての高橋グループの残党のような存在がいて、高橋氏の企てに関与していた可能性があるのではないか。
電通の子会社には、ゴルフやサッカーのイベント事業を手がけ、有名アスリートのマネジメントも担当する、業界ではよく知られたスポーツ関連企業がある。例えばこの会社が、AOKIからの報酬受領の窓口に使われた可能性がある。子会社を経由すれば、「AOKIからの入金は東京五輪に関する報酬でなく、ゴルフ・イベントの実施費用だ」と説明できる。
それにしても、子会社といえども電通本社の監査の対象になるはずだ。その監査をすり抜けたのは、よほど周到な準備がされていたからに違いない。つまり、社内に高橋氏の協力者がいた可能性が否定できない。これについてはやがて捜査で明らかにされるだろう。
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