歴史タレント・小栗さくら、高校時代にハマった“変わった趣味” 数日に1度、土方歳三の墓参りに

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「歌が歴史を好きになるきっかけになれば」

 そしてあるとき、運命の曲「the flag」と出会う。大げさかもしれないが、体に電気が走ったような感覚とはこのことか、と思った。歌詞の全ては紹介できないが、ぜひ一度読んでみてほしい。頭から終わりまで新選組にしか見えないのだ。冒頭に記した部分は、まるで仲間たちと別れ箱館戦争で孤軍奮闘する土方歳三であるし、そのほかは後年新選組の生きた証を語り残した、永倉新八のようでもある。あまりの興奮に、カラオケに行くたび、小田和正と堀内孝雄を歌う女子大生、という日々がしばらく続いた。

 しかし、いくら新選組のようであっても、それを描いたものではない。楽しい日々だったが、少しだけ物足りない気持ちもあった。

 数年後、私は「歴史っぽい」ではなく、歴史上の人物の心情を詞にして歌うという活動を開始する。歴史系アーティスト「さくらゆき」の始まりである。そこにたどり着くまでにはいろいろと遠回りもしたが、2014年にはついに「新選組」テーマの4曲を収録した「青き夢」を発売した。

 歴史小説やドラマのように、歌が歴史を好きになるきっかけになれば、と思う。史跡めぐりの途中で出会う、誰のものか分からない古い墓石。そんなふうに埋もれてしまう前に、歴史をつないでいきたい、作品を作ることで弔いたい。そんな想いではじめ、現在もその気持ちで歌い、歴史小説を書いている。

 全ての始まりは、あのとき聴いた「the flag」だ。私が書く歌も、誰かの歴史に響けば嬉しく思う。

小栗さくら(おぐり・さくら)
博物館学芸員資格を持つタレント。歴史番組・イベント・講演会等多数出演。初めての歴史小説『余烈』を刊行。

デイリー新潮編集部

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