27年続く不倫関係、50歳を前にメンタルが壊れ始めた彼女がとった「怖すぎる行動」とは
「僕には責任があるし…」
現在、治人さんの子どもたちは、16歳、13歳、12歳になった。響子さんの両親は元気で、相変わらず孫たちのめんどうをみてくれる。長男が反抗期だが、そこは祖父母が逃げ場になっている。次男はちゃっかりしながら自分のやりたいことを通すタイプ、長女は運動が大好きで、バスケット選手になると張り切っている。
「妻は職場で出世しているようです。僕は変わらず現場の研究者ですが、数年のうちには大学院に戻りたいなと思っています。今もしょっちゅう来てくれる妹は、当時の彼と事実婚状態。なんだかんだで家族は、それぞれ楽しく生きている」
一方で、陽菜子さんは仕事はしているものの、40代後半となっても実の両親と暮らしている。ひとりっ子だから、親の介護も始まりつつあって、ときどき、彼女は不安定になる。
そして数ヶ月前、ある“事件”が起こった。
「ある日突然、陽菜子がうちに来たんですよ。日曜日の午後、たまたま子どもたちはいなくて、響子は母親と買い物に行っていて、僕がひとりだった。チャイムが鳴って、カメラを見たら陽菜子が立っていた。あわてて外へ出ると、『さっき、奥さんを見かけたから、今、ひとりかなと思って』とにこやかに言うんです。来たら困るよと言ったら、『そうよね、わかった』とすぐに帰って行きました。何をしたかったのか、何かを確かめたかったのか。彼女が帰ってからポストを覗いたら、陽菜子から響子宛ての手紙が入っていました。もちろん、中を見ましたよ。そこには、『私が治人さんと一緒になるべきだった』ということが書かれていた」
やはり別れておけばよかったのだと彼は今さらながら後悔した。手紙は細かく切り刻んで何重にも袋に入れてゴミに出した。妻に知られなくてすんだとホッとしながら。
「彼女のメンタルがそれほど壊れているとは思えなかったけど、もしかしたら介護のこともあって限界に来ているのかもしれない。どう動くか予測がつかないので、僕自身もどうしたらいいかわからない。陽菜子のお父さんは、僕らが復活したことを知らないし、相談できる人がいないんです。困ったなと思いつつも、やはり僕には当時の責任があるし、それだけではなく陽菜子への思いもある」
結局、情に流されてずるずる来てしまい、陽菜子さんの人生の時間を無駄にさせただけなのかもしれないと彼は両手で顔を覆った。だが、別れようとしなかったのは陽菜子さんの選択でもある。彼だけが責任感を覚えるのは違うとも思う。
若いときの選択がきちんと決断にまで至らず、ずっと引きずってきてしまったがゆえの「今」なのかもしれない。あのとき「ぶった切る」勇気があれば、別の結末があっただろう。今さら何を言っても遅い。これからどうするのか、今一度、陽菜子さんとじっくり話してみるしかないのは、彼自身がいちばんよくわかっているはずだ。
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