統一教会がカネ集めに使った「日韓トンネル」 騙されて3億7000万円出した人も

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 安倍晋三元首相殺害の動機だったとして、あらためて統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が注目されている。教団は会見を開いて潔白を示そうと必死だが、まだ彼らが語っていないことがある。教団の創設者である文鮮明氏(1920~2012)が唱えた、日本と韓国を海底トンネルで繋ごうという「日韓トンネル」計画だ。

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 そもそも日韓トンネルは、戦前の日本が立案したものだった。1940年、旧鉄道省は、東京から朝鮮半島を経由して北京まで結ぶ「大陸横断弾丸列車計画」の一部にあたる「朝鮮海峡トンネル」を計画。むろん計画は、日本の敗戦によって頓挫した。

 それが1980年代に韓国で再燃した。81年11月10日、統一教会の創設者である文鮮明氏が、自らが主催する第10回「科学の統一に関する国際会議」で、全世界を高速道路で結ぶという「国際ハイウェイ構想」をぶち上げた。その一環として、韓国・釜山-対馬-壱岐-佐賀県唐津市を海底トンネルで結ぶというのが、現在の「日韓トンネル」計画である。

 釜山と九州は近いというイメージがあるが、計画される日韓トンネルの長さは200キロを超える。青森と北海道を結ぶ青函トンネルは53・8キロ、イギリスとフランスを結ぶユーロトンネルは50・5キロだから、いかに壮大な計画かが分かる。だが、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士はこう指摘する。

「その壮大な計画を『教団が実現する!』というのが、信者に向けたアドバルーンなのです。さらに、『日韓トンネルを造るため』という名目で多大な献金も集めてきたのです」

数億円の被害者も

 トンネルを造るからといって献金が集まるのだろうか。

「億単位の被害者はいくらもいます」(渡辺弁護士)

 過去には、統一教会を訴えた新聞記事もある。

《訴えによると、原告の男性は九〇年と九一年の二回にわたり、教団側から「日韓トンネルや中国に建設する自動車工場の資金が必要」などと持ち掛けられ、三洋信販(註:消費者金融会社)から総額約三億七千万円を借り入れ、担保として福岡市内の七カ所に所有する不動産(計約四千三百平方メートル)を提供する契約書に署名、押印した。/教団側は「名義を貸すだけで、支払いはすべて責任を持つ」などと説明、融資の全額は、教団側の開設した原告名義の口座に振り込まれた。しかし、三洋信販から「返済しなければ、担保物権を競売にかける」との連絡を受け、だまされていることに気付いたという》(日本経済新聞:96年4月9日付)

 かつては「1ミリ5万円献金(1ミリ掘るために5万円)」なる献金もあったとか。大金を集めて、トンネル造りは進んでいるのだろうか。渡辺弁護士は言う。

「他人の土地を勝手に掘るわけにも行かないので、唐津市内などに土地を購入して、試掘坑を掘っています。日韓トンネルをご存知の方の中には、これが日本側のスタート地点のようにとらえている方もいるようですが、あくまでも試掘でしかありません。国際ハイウェイ財団という団体が、いまも計画を推進しているかのように発表しています」

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