ジャニーズ主演ドラマはなぜ支持されなくなった? 愛される夏ドラマの共通点は「苦労人」

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ハズレを引きたくない視聴者心理 主演ではなく制作者で選ぶ視聴スタイルが主流に

 最近の傾向として、主演が誰かよりも、制作者や脚本家が誰かを重視する人が増えている。たとえば「石子~」は演出・塚原あゆ子さんとプロデューサー・新井順子さんという、「最愛」「MIU404」などを手掛けた黄金コンビ。視聴率は1ケタ台だが、「初恋の悪魔」は「カルテット」や「大豆田とわ子と三人の元夫」の坂元裕二さん脚本ということで固定ファンがついている。逆のパターンだと「赤いナースコール」は秋元康さんが企画・原作ということで、食わず嫌いを決め込んだアンチもいるのではないか。

「石子~」ではファスト映画が題材の回もあったが、ハズレのコンテンツを見て無駄な時間を費やしたくないという意識は若い世代ほど高い。世間や周りで人気かどうか、SNSで考察が盛り上がっているかどうか。そうした基準で選ぶ人たちにとっては、主演俳優よりもヒットメーカーの名前の方が安心材料になる可能性が高いだろう。

 だからジャニーズドラマが低視聴率といっても、主演ばかりに敗因があるとは限らない。粗が目立つ脚本や演出ということもある。棒読みと酷評されがちだが、ストイックな役作りや演技力に定評があるアイドルも増えてきた。ただ美形であればあるほど、等身大の男性としてのリアリティーが足りなく見えるという側面は否めない。

 イケメンでも、遅咲きの男性俳優は好評だ。それはブレークまでの葛藤が、演技にも深みを与えていると思わせるからだろう。「石子~」の中村倫也さんに、「ユニコーン」の西島秀俊さん。最近だと「最愛」で好演が光った松下洸平さんが思い浮かぶ。今後も注目作品に出続けることは確実だろう。

シンデレラストーリーはうそくさい!? 未来の幸せより今の肯定がほしいヒロイン像の変化

 人気のドラマを見ると、男女の凸凹コンビものが多いというのにも気付く。直情的で融通が利かない苦労人ヒロインと、飄々として柔軟な男性という組み合わせだ。初回から衝突するのはお約束だが、男女として引かれ合う予感までは発展しない。むしろ仕事での壁にぶち当たりまくる、職業女性の苦悩に時間は割かれている。

 それが今求められるヒロイン像ということかもしれない。ドジっ子なのにある日突然大抜擢されて、初日からミスしまくり! でも偶然再会したイケメンに助けられて大成功! 両想いで涙のハッピーエンド! そんなシンデレラ的ドラマはひと昔前の王道フォーマットとはいえ、夢物語だとみんな知っている。努力は報われるとは限らないし、小さなミスが一生を左右することもある。実働に見合わない対価は怖い。偶然再会したイケメンから求婚されて困っています? それなんてラノベ?

 未来の幸せなんて期待しない。今の頑張りを肯定してほしい。そしてそれは、別に男性でなくてもいい。直情型の苦労人ヒロインたちからは、そんな切実さと不器用さがたちのぼる。かつて庶民にとっての夢を描いたドラマも、今はささやかな現実を肯定するためのものになりかわったのかもしれない。夏ドラマは始まったばかり。ゴールとして単一化された女性像ではなく、エールとなる人間像をどれだけ多様に描けるか、各局の姿勢と手腕が問われているのだろう。

冨士海ネコ

デイリー新潮編集部

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