上京3カ月の作家・大前粟生が未だ東京になじめない理由 「東京と東京性のあいだにいるような感覚がある」
漠然とイメージしていた「東京」
『おもろい以外いらんねん』『きみだからさびしい』などで多くの読者の心をつかみ、最新刊『柴犬二匹でサイクロン』では短歌にも挑戦している、作家の大前粟生さん。繊細な表現で人気の彼が、3カ月の上京生活で考える「東京性」という言葉の意味とは。
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東京で暮らしはじめて3カ月になる。出会う人たちに、「東京はどうですか?」とよく聞かれる。その度に「意外と住みやすいですね」などと答えているけれど、漠然とイメージしていた「東京」というのはネガティブなものだった――人が溢れてただ交差点を渡るだけなのに迷子になりそうな街だったり、満員電車、疲れた顔の人たち、どこを見ても脱毛か自己啓発の広告ばかり。...