逮捕間近! 五輪利権のキーパーソン「高橋治之」 それでも特捜部に上がる「国策捜査」の声
焦点に浮上する「職務権限」の有無
さらに民放キー局の社会部デスクはこう話す。
「最初は単純収賄でやるという話だったが、蓋を開けてみれば、よりハードルの高い受託収賄に容疑が格上げされていた。後者の場合、公務員が職務に関して請託(依頼)を受け、賄賂をもらうことが構成要件となりますが、その際に鍵を握るのが職務権限の有無です」
組織委の定款によると、理事の権限は<大会準備や運営に関する事業を行う>とあるのみで、具体的な権限は明記されていない。
「スポンサー契約やライセンス商品の販売などについても理事会の決議事項でないため、高橋氏に“職務権限”があったか否かは、取材をしてもよく分からないというのが正直な感想です」(同)
しかし特捜関係者は、明確な職務権限がなくても立件は可能とも話しているという。
「高橋氏が組織委に出向していた電通の元部下などに影響力を行使して、“職務に密接に関連する行為”としてAOKI側に便宜を図ったとのロジックです。ただ容疑の焦点がボヤけるのは否めず、かなり強引な捜査をしているとの印象が強い。“一大疑獄”のように騒がれていますが、取材記者の間では“国策捜査では?”といった声も漏れ始めています」(前出・司法記者)
先行するフランス当局の捜査
検察関係者の話だ。
「そもそも今回の容疑案件は特捜部が独自に掴んだネタとは言えない。東京五輪の招致活動をめぐって、フランス司法当局がIOC関係者に多額のカネが流れた贈賄疑惑を以前から捜査しており、その過程で高橋氏の名前も一時浮上していた」
この捜査は現在も継続中とされ、フランス当局から日本の検察庁にも協力要請があり、特捜部がフランス当局の求めに応じて関係者を嘱託尋問した経緯もあるという。
「東京五輪の本当の闇に斬り込んでいるのはフランス当局で、現在の特捜部はそこから派生したニッチな捜査を行っているように映る。それでも自分たちで五輪疑惑を立件できれば、フランスの“下請け”に甘んじただけとの顛末は避けられ、特捜部の“面目も保たれる”との声がある」(同)
特捜部と“ドン”の攻防はこれからが本番だ。