ロシアは「ガス」を武器として使えない事情 日本はEUの失敗に学ぶべき
ロシアと欧州(EU)を結ぶ主要天然ガスパイプライン(ノルドストリーム)は21日、10日間の定期点検を終えてドイツへのガス供給を再開した。ノルドストリームはロシアからEUへのガス供給量の3分の1以上が通る地域最大のパイプラインだ。懸念されていた点検期間の延長はなかった。
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供給量は定期検査開始前と同じ水準(従来計画の40%に当たる日量6700万立方メートル)となる見通しだ。ノルドストリームを運営するロシア国営ガス大手ガスプロムは、カナダに修理に出していたタービン(長距離ガス供給に不可欠な空気圧縮機の一部)の返却の遅れを理由に6月14日以降、供給量を40%に制限していた。ドイツ政府の要請でカナダ政府が対ロシア制裁の例外措置としてタービンの返却を認めたことから、タービンが届く24日以降にガス供給量は増加することが見込まれている。
だが、ガスプロムは26日に別のタービンを修理に出すことになっており、欧州各国はガス供給量が再び削減される可能性に身構えている。ロシア側が「制裁に伴う技術的障害が原因だ」と主張しているのにもかかわらず、EU側は「ロシアはガス供給を揺さぶりの材料として利用している」と反発を強めている。
ノルドストリームの定期点検はこの時期に行われるのが通例だが、今年ほど注目されたことはなかった。まさに「ノルドストリーム騒動」だと言っても過言ではない。
危機感を強めるEUの欧州委員会は20日、ロシアからのガス供給の途絶や大幅減少に備えた緊急計画案を公表した。他の地域からの調達や再生可能エネルギーの強化とともに、加盟国に対し「節ガス」を要請するなどの内容だ。欧州委員会は翌8月から来年3月まで加盟国にガス消費量を過去5年間平均と比べて15%減らすよう提案している。当初は自主的な取り組みとするが、供給状態が悪化すれば強制措置に切り替える構えだ。
だが加盟国から反発の声が上がっている。加盟27カ国のうち少なくとも12カ国(スペイン、ポルトガルなど)がこの提案に難色を示しているという。この提案が成立するには過半数の賛成が必要なため、緊急計画案の実現は早くも危ぶまれている。
緊急計画案を提出したEUのフォンデアライエン委員長は「ロシアがガスを『武器』として使っている」と繰り返し批判しているが、この発言に筆者は強い違和感を覚える。
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