静岡県警の捏造?清水郵便局に届いた現金「43200円」と「36歳同僚女性」の謎に迫る【袴田事件と世界一の姉】

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「5点の衣類」より手の込んだ捏造

 いずれにせよ、不可思議な話だらけだ。郵便局員が机の上に置いてあった事故郵便物を開いて驚いたということになっているが、そんな事実があった証拠はなく、公判でも証明されていない。そもそも宛先不明などの事故郵便物の場合、局員は基本的に開いたりはしないという。

「焼けたお札」「五万円を預けた女」の不可思議さ奇妙さも、捜査機関による作り事とすれば腑に落ちる。

 袴田事件での「捜査機関の捏造」は、事件から1年以上後で見つかったとした「5点の衣類」だけではない。早い段階から他の可能性を排除して巖さんを犯人と決めてかかり、あの手この手で証拠(物的なものだけではない)を捏造していた。今となっては唯一注目されている極めて単純な「5点の衣類の捏造」とは、ずっと手の込んだ「初期の捏造」の延長なのである。

 いつだったか、筆者はひで子さんに、弟の「女癖」について訊いてみたことがある。「巖は真面目で女たらしなんかじゃありませんよ」といった答が来るとばかり思った。ところが、である。ひで子さんはこう言って豪快に笑い飛ばしたのだった。

「当時は巖と一緒に暮らしていたわけではないからよくは知らんけれど、巖だってれっきとした一人前の男だったんだから。女の1人や2人といろいろあったところで、全然おかしくなんかありゃせんでしょ。ワハハハ」

 さすがは「世界一の姉」である。もはや弟は苦笑するしかない。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

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