じつは意外に多いヤクザの自殺 2つの実例から見えてくる根本的な原因とは

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 2021(令和3)年における日本の自殺者数は約2万1000人だった。平均して毎月2000人近くが自殺している。日本の自殺者総数は、近年では多少の減少傾向もあるが、このように毎年2万人強の数値をコンスタントに弾き出している(作家・ノンフィクションライター・藤原良)。

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 自殺者たちを職業別に見ると、無職者と職業不明者が全体の過半数以上で、警視庁の分析によると自殺の原因は、さまざまな要因が重なった結果とされている。

 無職者や職業不明者の中には、高齢者だけでなく暴力団員も多分に漏れず含まれている。

 一見して、社会的にタフな生き方を選んだアウトローともいえる暴力団員たちが、自殺などするものか?──と疑問を感じる人もいるかもしれないが、実は暴力団員の自殺騒動は決してめずらしくない。

 ある者は抗争のケジメをつけるために自決し、またある者はやむにやまれぬ渡世のしがらみによって自ら命を絶つ道を選ばざるをえなくなる。ある意味、こういった死に方には、生き様の美学的な要素も垣間見られるが、実際、暴力団員が自殺をするのは、なにもこういった理由だけではない。

人間不信による自殺

 指定暴力団の某直系団体の組長の実子であるAさんは、所謂「組長の息子」として、学生時代は運転手付きの高級車で送迎され、暴力団員となってからは父親のコネを利用して地元の有力者や政治家とも親交を重ねながら、半ば自由奔放な暮らしをしていた。

 やがて実父の組長が病気で他界し、組長の席は組員序列により別の者が継ぐと、Aさんは幹部に昇格して「先代の息子」としての影響力を組の内外に発揮するようになった。

 このようにAさんは、暴力団員としてはかなり恵まれた方だった。そんな順風満帆以上の暴力団員人生を送っていたAさんの生活が一変したのは、実父の組長が亡くなってから数カ月後のことだった。

 ある日、Aさんの前に「先代に世話になった」という人物が現れた。彼はAさんの実父であった組長に大変世話になったにも拘わらず、その恩返しをする前に組長が亡くなってしまったので、組長に代わってAさんに恩返しをしたいと申し出たのであった。彼は「絶対に儲かる投資案件があるので、2000万円ぐらいを投資して欲しい。恩返しとして、必ず儲けさせますから」と話した。自分が恩返しをされる立場であることに気をよくしたAさんは、彼の話に前のめりになった。

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