「日産スタジアム」施工 耐震の「黒沢建設」で社長兄vs.専務弟が繰り広げる“激震”骨肉の争い
院政
目下、建設業界ならその名を知らぬ者はいない名門企業で、骨肉の「兄弟喧嘩」が演じられている。それは、「PC(プレストレストコンクリート)工法」を用いた施工を手掛け、「技術の黒沢」と呼ばれる「黒沢建設」だ。
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PC工法とは、コンクリートの内部にあらかじめ通したワイヤーを緊張状態にし、コンクリートに引張(ひっぱり)力が生じないようにしてから梁や柱を組み立てるというもの。この工法による建築物は、耐久性や耐震性に優れ、東日本大震災でも被害例が確認されなかったほどだとか。「日産スタジアム」や「味の素スタジアム」といった競技施設や増加の一途にある物流倉庫の多くも、黒沢建設のPC工法が採用されている。
創業は1966年9月。以来、兄の黒沢亮平社長と弟の黒沢志郎元専務の二人三脚で、売上高420億円超を誇るPC工法のリーディングカンパニーに育て上げてきた。ところが昨年4月、弟の志郎氏が専務を解任されたのだ。
志郎氏が打ち明ける。
「2018年の夏、兄に二人揃って引退し、黒沢建設の副社長を務める兄の息子に経営を譲ろうと提案しました。一旦、その場では兄も了承したものの、翌日に撤回。どうやら、私が“KTB協会”を足場に黒沢建設に院政を敷くと、兄は誤解したみたいでした」
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