「中村警察庁長官」が国葬後に辞職へ 逮捕状の握り潰しや元首相秘書・子息への忖度捜査で「官邸の番犬」と呼ばれたスーパー官僚の出世すごろく

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記者たちにとって貴重な情報源

 この件については、中村氏が週刊新潮の取材に対して「私が決済した。(捜査の中止については)指揮として当然」とその事実を認めたことも話題となった。

「警察当局の幹部が個別の案件について取材に応じるというのはほぼ皆無で、現役はもちろん警察OBからも遺憾の声が上がりました。中村氏は普段から冷静沈着なタイプですが、少し油断があったのかもしれません。週刊新潮に喋ってからは、“メディアの幹部を逮捕するというのは大変なことなんだ。たとえ君たちであっても逮捕中止を命じたよ”などと記者たちに話していましたね。中村氏は人事情報などをさらっとレクチャーしてくれるので、記者たちにとって貴重な情報源で、名前の読み方をもじって“カクさん”などと呼ばれ、頼りにされていました」

 と、社会部記者。

 インナーの記者たちに「自身の判断は間違いなかった」と改めて口にするあたり、警察内外からのハレーションを気にしていたのだろうか。

首相官邸の番犬

「それは間違いないですね。もちろん中村氏側に立って、証拠隠滅の可能性は低いのだから、取り調べるにしても身柄を取る必要はなく、任意で良いのではないかと言う幹部がいたのも事実です。そういった主張のほうが多かったと思います。この件は、刑事事件としては嫌疑不十分、つまり、疑いは残るけども証拠が不十分だから起訴しないと検察が判断しました。中村氏はそれもあって、自身の判断の正当性を主張していたようにも記憶しています。ただ先日、民事事件では性的暴行があったことが最終的に認められたわけで、国民に説明する機会があったとしたら、少し説明しづらい案件になったことは間違いないでしょう」(同)

 山口氏は当時、安倍元首相の写真をカバーに使用した著書を出版し、ワイドショーでコメントするなど、安倍氏に食い込む記者として知られていた。そんな記者の逮捕を取り消したことで、中村氏は「首相官邸の番犬」などと揶揄されることとなる。その一方で同じ刑事部長時代、この逮捕状握り潰しほどは知られていないものの、安倍氏と直接つながる「忖度捜査」に関わっていた。

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