国葬の法的根拠、専門家の見解は 政府が難しい判断を迫られる“台湾への対応”
「聞く力」はあっても「聞くだけ」で腰が重いと評されてきた総理なれど、今回の決定ばかりは素早かった。秋にも日本武道館で執り行うとされる安倍元総理の国葬。14日に岸田総理が自ら明かしたが、その手腕が問われる幾つかの難題が待ち受けている。
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〈死してなお税金使う野辺送り〉
〈忖度(そんたく)はどこまで続く あの世まで〉
これらは7月16日付朝日新聞朝刊の朝日川柳に掲載された一般読者からの投稿だ。SNSを中心に“死者に鞭を打つのか”といった批判が殺到し、大炎上となっている。おなじみ日本共産党や先日の参院選で当選した辻元清美氏なども国葬に「反対」の大合唱だが、全額国費で賄う政治家の葬儀は1967年の吉田茂元総理の国葬が最後だ。
事実上の“喪主”となる岸田総理は、国葬の理由として安倍政権が憲政史上最長で大きな実績をさまざまな分野で残したことや、国際的な評価を挙げた上で、内閣法制局にお墨付きを得たと説明する。
「外交儀礼上も当然」
憲法学が専門で日本大学名誉教授の百地章氏が言う。
「内閣府設置法では、内閣の職務に関する事務の一つとして『国の儀式』が明記されています。何が国の儀式にあたるかは内閣の裁量権の範疇でしょう。全国戦没者追悼式や吉田元首相の国葬なども閣議決定に基づき行われていますが、今回は法的根拠がより明確であり間違っていません」
百地氏はこうも指摘する。
「17日に発表された毎日新聞の世論調査では約7割が安倍元総理の功績を評価すると回答しました。葬儀に何千もの国民が列をなし、今なお事件現場や自民党本部などには献花が絶えません。各国首脳が続々と好意的な弔意を寄せたことに鑑みれば、そうした人々の想いに政府が応えるのは、外交儀礼上も当然です」
外務省には各国から、弔問の際は受け入れ可能かとの問い合わせがあるという。
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