「太陽にほえろ!」50周年 最も在任期間が長かった新任刑事は誰か?ファンも驚く7つの逸話
意外にも「走らなかった」刑事
3つ目は「新人俳優が新刑事に抜擢されるときは、レギュラー出演する前に演技のテストを兼ねて出演している」。その最初が当時文学座研究生だった松田優作だ。第35話「愛するものの叫び」で障害者施設の職員を熱演。「規則なんだから、仕方ないんですよ!」と号泣する迫真の演技に、スタッフも度肝を抜かれたという逸話が残っている。このほか勝野洋は第89話「地獄の再会」で若手刑事役、宮内淳は第148話「友情」で大学の柔道部員役、木之元亮は第245話「刑事犬対ギャング犬」で警察犬の調教師役、渡辺徹は第460話「スニーカーよ、どこへゆく」で聞き込みされる会社員役を演じている。
中には山下真司のように2度出演するケースもある。第324話「愛よさらば」で青年作業員役、第341話「同期生」で若手刑事役を演じている。これはボン殉職後の新人刑事として登場予定だったものの、ボンの殉職が延びたためだった。結局、演じるスニーカーは第364話から登場している。
4つ目はオープニングのタイトルバックに関して。大抵の犯人が走って逃げるため、刑事も追走するシーンが多い本作は“走る刑事ドラマ”としても知られている。テキサス(出演期間2年)とボン(同約3年9カ月)のコンビが合わせて走った距離は、地球約半周分とも言われている。歴代の若手刑事はその象徴がオープニングのタイトルバックで走っていたが、そこで一人だけ「走らなかった」刑事がいる。ジーパンである。本作の歴代刑事の中で“走る姿の美しさは一、二を争う”と言われたが、なぜか走らず、ただ雑踏の中を歩くだけなのだ。
幻の女性刑事
5つ目は在職期間の長さに関して。1人目のマカロニ、2人目のジーパンはともにわずか1年で殉職。3人目のテキサスも1年での殉職降板が予定されていたが、熱心なファンたちが助命嘆願を寄せたことがきっかけで、1年の延命が決まった。そして以降、1年で殉職する決まりはなくなり、その都度タイミングが見定められることになった。では最も在職期間が長かったのは誰か。殉職した刑事では第256話 から第519話まで全263話に出演したロッキーがダントツで、先輩刑事としてロッキーとコンビを組んだボンが第168話から第363話まで全195話とこれに続く。最終回まで存命した刑事では、ドックが第415話から第718話まで全303話にわたり出演した。
6つ目は「2日で去った新人女性刑事がいる」というもの。第546話で登場した谷山美沙(高田早苗)だ。転勤したジプシーこと原昌之の後任として配属した彼女は、着任早々事件を解決するなどしたが、犯人にナイフで襲われた恐怖心から辞表を提出し、わずか2日で一係を去っていった。その後、交通課勤務の婦警で殉職したロッキーの妻・岩城令子(長谷直美)が後任に配属され、見事事件を解決している。令子は双子を持つママさん刑事だったため、愛称は“マミー”。この回のサブタイトルは「マミー刑事登場!」だった。
谷山はゲスト出演だったものの、正式に七曲署の捜査一係に配属された歴代刑事の1人でもある。にもかわらず、唯一、ニックネームがなかった存在であった。
最後も「幻の刑事」に関して。第715話「山さんからの伝言」で海外研修へ旅立つ形で七曲署を去って行ったデュークこと島津公一(金田賢一)の後任として予定されていたのが、当時人気絶頂だった時代劇『必殺シリーズ』で活躍していた京本政樹だった(2001年に刊行された自叙伝『META-JiDAIGEKI』で明らかにされている)。だが、石原裕次郎の体調が思わしくなく、レギュラー復帰を断念したため、ドラマの終了が急遽決定。京本の登場は幻に終わった。
「太陽にほえろ!」は石原が華を添える形で1話だけ復帰した第718話「そして又、ボスと共に」で、14年4カ月の歴史に幕を降ろした。
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