「西郷輝彦」が時代劇でやってみたいと言っていた人物は誰か

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 ペリー荻野が出会った時代劇の100人。第16回は、歌手で俳優の西郷輝彦(1947~2022年)だ。

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「困った時の西郷さんだったなあ」

 2月20日に西郷輝彦さんが75歳で旅立った。時代劇の取材でお話を聞くたびに、その明るさと若々しさ、鮮明な記憶力にとても助けられた。いつも「もっと聞きたい」と思いつつ時間切れになるので、機会ができるととにかく取材をお願いしたものだ。

 なぜ西郷さんの話が面白かったのか。それは事務所の意向や世の流れとかではなく、自分の意思で仕事に向き合ってきたからだ。それは俳優デビューのときからはっきりとしている。

 西郷輝彦が鹿児島から上京し、「君だけを」で歌謡界にデビューしたのは昭和39(1964)年。以来、「星のフラメンコ」など数多くのヒット曲を持つ歌手として活躍。橋幸夫、舟木一夫とともに歌謡界の「御三家」と呼ばれた日本の元祖アイドルである。

 本格的な俳優デビューは、昭和48(1973)年の初主演作「どてらい男(ヤツ)」(関西テレビ制作・フジテレビ系)だった。

初ドラマで視聴率35%

「細うで繁盛記」などド根性ドラマで人気を博した作家・花登筺(はなと・こばこ)が、実在の機械卸「山善」の創業者・山本猛夫をモデルに書いた連載小説を自ら脚色したドラマで、花登から直接、出演のオファーがあったという。

 物語は昭和10(1935)年、福井から商人の街・大阪立売堀(いたちぼり)に丁稚奉公にきた小学校卒の“モーやん”こと山下猛造が、妬み、裏切り、敗戦など困難を乗り越え、商売人として成長していく。

 関西テレビ開局15周年記念作での抜擢だったが、大阪で撮影に入ると半年は歌番組には出られない。事務所は反対したが、西郷の決意は固く、坊主頭に断髪して撮影に入った。その結果、蹴られても踏みつけられても立ち上がり商売にまい進する主人公の姿は、石油ショックで落ち込む日本人を励まし、最高視聴率35・2%、全181話まで続くヒット作となった。

 このドラマと同時期に、西郷は時代劇デビューを果たしている。池波正太郎・原作、高橋英樹・主演の映画「狼よ落日を斬れ」(松竹)で、沖田総司を演じたのだ。監督は時代劇の名匠といわれた三隅研次。現代劇の青春映画は何度も経験していたものの、時代劇未経験でできないことばかり。誰もが知る剣士・沖田をどう演じるか。「悩んでも仕方ない。無手勝流で演じました」というのは、思い切りのいいこの人らしい。

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