巨人の名投手がなぜかTシャツ姿でマウンドへ オールスターで起きた“仰天ハプニング”
ホーム用のユニホームをクリーニングに
今年も7月26、27日の2日間、プロ野球オールスターゲームが開催される。過去には阪神時代の江夏豊の9連続奪三振をはじめ、数々の名場面が演じられているが、その一方で、思わずビックリのハプニングや瓢箪から駒のような珍事もあった。そんな記憶に残るエピソードを集めてみた。【久保田龍雄/ライター】
うっかりユニホームを忘れてきたことから、Tシャツ姿でマウンドに上がる羽目になったのが、1991年の槙原寛己(巨人)である。
7月23日、東京ドームでの第1戦に先発した槙原は、2回を無失点に抑えて勝利投手になり、優秀賞とナイスピッチング賞を獲得した。
翌24日は広島市民球場に移動しての第2戦だったが、オールスター明け直後のヤクルト3連戦で先発が予定されている槙原の連投はないものと思われた。さらに、広島での試合を公式戦同様、ビジターと勘違いした槙原は、ホーム用のユニホームを「要らない」と思い込み、クリーニングに出してしまった。
だが、球場に移動するバスの中で、オールスターはホーム用が必要であることに気づいた槙原は、思わず「しまった!」と大声を上げた。
スタンドが爆笑の渦に
自著「プロ野球視聴率48.8%のベンチ裏」(ポプラ社)によれば、何事かと心配した原辰徳に事情を説明したところ、原は黒の油性マジックで槙原が持ってきた練習用のTシャツの文字が薄くなった部分を塗り直し、「これなら大丈夫だ」と太鼓判を押したという。
確かに、このまま試合に出場せず、ベンチの中で目立たぬようにしていれば、何ら問題はなく、やり過ごせるはずだった。
ところが、皮肉にも試合は総力戦となり、3対3の同点で延長戦に突入する。そして12回、投手を使いはたした全セ・藤田元司監督が、槙原にリリーフを要請してきた。
槙原が困惑の表情で事情を打ち明けると、藤田監督は「まあ、いい、それで投げてくれよ」と意に介さず、マウンドに送り出した。
かくして、夢の球宴のマウンドにTシャツ姿の投手が上がるという前代未聞の珍事が実現する。スタンドが爆笑の渦に包まれたのは言うまでもない。
さらに2死後、槙原のフォークのすっぽ抜けを避けようと反射的にバットを出した秋山幸二(西武)が自打球を右目の上に当て、昏倒するアクシデントが起きた結果、代わりの野手がいなかったため、まさかの代打・野茂英雄(近鉄)が登場したばかりでなく、その裏の守りでは、野茂に代わって工藤公康(西武)がレフトを守る羽目に。ユニホームを忘れたことがきっかけで、これほどまでに「マーフィーの法則」が発動しまくるのだから、野球は怖い。
後日、槙原が秋山に謝罪すると、「いやいや、しょうがないよ。オレもあのとき、前の日の酒が残ってたんだ」と逆に慰められたという。
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