夫婦で「秘密のパーティー」を楽しむはずが… 妻を寝取られた夫が今さら持ち出す“彼女の過去”
史奈さんの告白
婚姻届は出さずにはじまった結婚生活、史奈さんはそのまま就職した。遼太郎さんは毎日、夕食を作り、家事万端取り仕切った。飲み会があろうが残業があろうが、一言も文句を言わず、励まし続けた。
「僕も一応、経営者なのでそれなりに忙しいんですが(笑)、自分の睡眠時間を削っても彼女には尽くしました。彼女の笑顔が僕の生きる糧だった」
4年後、彼女が本格的に仕事に目覚めたところで妊娠が発覚したが、安定期に入る前に流産した。
「このときの彼女は本当に痛々しかった。『妊娠したのに、私、一瞬、仕事ができなくなると思ってしまった。だから流産したんだ』と自分を責めてばかり。僕も悲しかったけど、彼女が悲しんでいるのを見るのがつらかった。しかたがなかったんですよ。だけど彼女はそうは思えなかったみたいで、『離婚してもいいよ』って。僕は子どもがほしくて結婚したわけじゃない、自分の生涯をかけて愛する人に出会ったから、その人の笑顔のために結婚したんだ、と彼女に言い続けました。あれが僕ら夫婦の原点かもしれません。あのときから史奈とは心がしっくりかみ合っている実感が強くなりました」
ただ、そのとき心乱れた史奈さんが、ある告白をした。それがのちのちまで遼太郎さんを苦しめることになる。
「あんな仕事をしていたから、と彼女がふと言ったんです。どうやら彼女、学生時代に風俗、それもソープランドで仕事をしていたことがあると。ほんの短期間だけど、どうしてもお金がなくて、と。彼女、大事に育てられたお嬢さんだと思っていたんですが、実はそうではなく過干渉の親に虐待もどきの育てられ方をしていた。そのとき初めて気づいた僕もどうかしていますが」
大学は奨学金を借り、生活費も自分で稼いでいたという。だから遼太郎さんに出会って救われたのだと彼女は言った。最初、結婚に前向きでなかったのは彼を信頼できるかどうかわからなかったから。
「でも今はあなたと結婚して本当によかったと思ってる。世界一、信頼していると言ってくれて。それを聞いて、僕はもうここにいる必要はないと引っ越しを提案しました。彼女の実家から遠い場所へ越したんです。いろいろなことをカミングアウトして気が楽になったのか、彼女は以前より快活になりました」
それきり子どもはできなかったが、それでもいいと遼太郎さんは思っていた。少しだけ、過去の仕事の件が心に引っかかってはいたが、目の前の史奈さんをひたすらに愛した。
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