住民4700人のうち外国人は半数以上 元エリート商社マンが川口市「芝園団地」に住みついた意外なキッカケ
会社を辞めて松下政経塾
岡﨑氏は早速、芝園団地を訪れた。
「団地内を見て回ったのですが、特に荒れていませんでした。自治会の会長や副会長、事務局長に話を聞くと、2012年に自治会の管理事務所で中国人の通訳を雇っていたのです」
通訳は、中国人の住民にトラブルにならないように注意したり、新しく入居する中国人に、団地でのマナーを教えたりしたという。
「その甲斐あって状況はかなり改善されていました。自治会は日本人と中国人の交流を望んでいるようでした。僕は、日本人と外国人の共生について非常に興味があったので、その後も芝園団地がすごく気になりました」
岡﨑氏が日本人と外国人の共生に興味を持ったのは、三井物産で海外赴任している時だったという。
「三井物産では、経理の審査をしていました。三井物産ノルウェーは、四半期の決算予想と実際の決算の数字がいつも違うので、上司から解明してこいと言われたのです。ノルウェー人は、夕方4時半になるとみな一斉に帰社します。日本人は仕事優先で、定時に帰る人はほとんどいません。なので、日本は四半期の決算予想が外れることはない。でも、ノルウェー人は仕事を優先しないので、期待されたような営業成績が上がらず、決算も予想値より低くなることは珍しくありません」
岡﨑氏は、現地の日本人スタッフとノルウェー人の社員の間でコミュニケーションが取れていなかったことに気づいた。
「日本人と外国人がどうしたら上手く交流できるか、という思いがずっと頭から離れませんでした。それで国際交流を学ぶため、会社を辞めて松下政経塾に入り、国際共生、多文化共生について勉強しました」
実地研修が芝園団地
週刊新潮が取り上げた芝園団地の記事に興味を持った岡﨑氏は2013年夏、団地の夏祭りに出かけた。
「盆踊り大会で、踊っているのは日本人。運営も日本人。外国人はただ観ているだけ。正直言って、交流にはなっていませんでした」
岡﨑氏は2014年4月、実際に芝園団地へ引っ越した。
「松下政経塾の3年目で、自分の好きなところで実地研修をすることができました。その一環として芝園団地に住んでみることにしました」
岡﨑氏は入居してすぐ、自治会の役員になった。防災部の副部長である。
「2014年7月、防災の講習会を開きました。70人の参加者のうち外国人は2割の14人でした。講習会では日本人と外国人が一緒に話を聞いているだけで、交流はありませんでした」
そもそも芝園団地に住む日本人は、入居してからかなり年月が経っているため高齢者が圧倒的に多い。一方、外国人は若い人ばかりだとという。
「外国人に日本人との交流を勧めても、『高齢の日本人と何を話していいか分からない』と言うのです。これは簡単にはいかないなと思いました。日本人同士でも高齢者と若者の交流は難しいですからね」
同年10月と11月、国際交流のための芝園賑わいフェスタを開催した。
「団地内には、中国人のバトミントンクラブや中国人のママさんグループがあったので、ブース(仮説売店)を出して欲しいと依頼すると、バトミントンクラブは水餃子を、ママさんグループは中国の子供の遊びを展示実演してくれたのです。交流が一歩進んだ感じです」
自治会は、地域住民が自分たちの力で住みよい街にする組織で、外部の人間が関わることを望んでいなかった。
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