住民4700人のうち外国人は半数以上 元エリート商社マンが川口市「芝園団地」に住みついた意外なキッカケ

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 埼玉県川口市の芝園団地は、住民の半数以上が外国人で占めることで知られる。10年ほど前は中国人ばかりだったため、「チャイナ団地」と呼ばれたこともあった。三井物産の商社マンだった岡﨑広樹氏(41)は、2014年からこの団地に住み始め、自治会事務局長として日本人住民と外国人住民との“共生”に取り組んでいる。そして今月、『外国人集住団地 日本人高齢者と外国人の若者の“ゆるやかな共生”』(扶桑社新書)を出版した。本人に話を聞いた。

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『外国人集住団地』では、芝園団地だけでなく、UR大島六丁目団地(東京都江東区)、県営いちょう上飯田団地(神奈川県横浜市)、UR知立団地(愛知県知立市)、UR笹川団地(三重県四日市市)も取り上げている。いずれも外国人住民が多い団地で、日本人と外国人との共生のあり方を取材した。

 著者の岡﨑氏は埼玉県上尾市出身。早稲田大学商学部を卒業後、三井物産に就職した。イギリス、オランダ、ノルウェーに赴任した後、2012年に退社。松下政経塾で学ぶ中、芝園団地に興味を持ったという。

週刊新潮がキッカケ

 日本住宅公団(現・UR都市機構)の芝園団地がオープンしたのは1978年。敷地は10万平方メートルあり、総戸数は2454戸。URの団地は家賃の4倍の月収があれば保証人はいらない。更新料や礼金もないことから、外国人には借りやすかった。1990年代から中国人の入居者が増えていった。

 現在、芝園団地がある芝園町には約4700人が住み、その55%となる約2600人が外国人という。外国人の大半は中国籍で、後はバングラデシュ、スリランカ、ネパール、ベトナムとなっている。

 芝園団地がチャイナ団地と呼ばれたのは2010年だった。当時、中国人の住人が全体の33%になり、文化、習慣の違いから、住民間で様々な軋轢が生まれていた。

「2013年3月、週刊新潮が報じた記事をネットで見ました。こんなに酷い団地があるのかって興味を持ったのです」

 と語るのは、岡﨑氏。

 週刊新潮は2010年3月18日号で、「住人33%が中国人になった埼玉県『チャイナ団地』現地報告」という記事を掲載している。一部を抜粋すると、

《何と、この団地では空からゴミが降ってくるのだ。
「彼らはベランダからゴミを投げ捨てるんですよ。人参の切れ端など生ゴミは当たり前。中には子供のオムツを放り投げた奴もいました。下の階で干していた蒲団に汚物がついたことがありました。もっと酷いのは火のついているタバコを投げ捨てるんです。この前も洗濯物が焦げて問題になりましたよ」(団地内の掃除を担当する女性)》

《日本人は団地の踊り場や階段で大便をしたりはしない。ところが、この団地では日常的に大便が発見されているのである。
「毎朝のように水で流して掃除していますよ。ホームレスが犯人だという人もいますが、誰が13階や14階まであがってやりますか」
 とは先の掃除担当者だが、30代の男性住人は言う。
「ある時、日本人のおばさんが、中国人女性が階段で用を足している所を見つけた。注意すると、こう言われたそうです。“トイレで流す水がもったいない”」》

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